哀歓善戦

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「初めまして。」

「は、初めまして!よろしくお願いします!」


集会が終わり、改めて軽くあいさつをかわす2人。

そんな彼らを見たタケシは、驚いた表情をうかべて言った。



「イミテ、珍しいな。お前がそんな友好的に接するなんて…。」

「友好的?別に普通だけど。」

「そうか?いつもはもっと周りは皆敵って感じだろ。なんだか新人に対しては優しいな。」

「……。」


タケシの言葉を無視し、イミテはそっぽを向く。

そんな彼女にタケシは苦笑し、続けた。



「実は新人をお前の下につかせるかどうか迷ったんだ。お前は絶対に嫌がると思ってたからな。」

「(たしかに“この子”じゃなかったら、断ってたかもね。)」

「まあ…引き受けてくれて何よりだ。ちゃんと面倒みてやれよ?」

「言われなくても分かってる。…おいで。部屋まで案内してあげる。」

「あ、はい!」


少年はイミテの後についていき、2人はメインホールを後にした。












場所は変わり、城の武器庫に彼らはいた。


武器庫ということもあり、ここには滅多に人が来ない。

唯一人が出入りするのは、武器の点検と掃除の時のみだ。


「イミテさん…?部屋に行くんじゃないんですか…?」


少年は首を傾げて聞く。



「君に、聞きたいことがあって。」


イミテは振り返り、少年の顔を見つめた。

少年は思わず、バッと帽子をさらに深くかぶる。



「バレてないとでも思った?……イエロー。」



部屋に、一瞬の沈黙が流れる。



少年…いや、少女は、苦笑いをうかべて観念したように帽子をとった。

フサアと、長い金のポニーテールがゆれる。



「こんなに早くばれちゃうなんて…。やっぱり、イミテさんはすごいですね。」

「…男装までして、何のためにこんなとこに来たの?」


ふわりと笑ったイエローとは対照的に、イミテは厳しい目つきで彼女を問いただす。




「せっかく逃がしてもらったのに、わざわざまた戻ってきて……恩知らずだって分かってます。」


イエローは申し訳なさそうに、話し始めた。



「でも僕…強くなりたかったんです。イミテさんみたいに、力が欲しい…!」

「………。」


「イミテさん、言いましたよね?この世界では力がないほうが生きやすい、って。」


イエローの言葉にイミテは特に返事をするわけでもなく、ただ黙って聞いていた。


「僕は…たとえ生きづらくなったとしても、力が欲しいんです!王に復讐するための力が…!」

「……復讐して、その後どうするの?そんなことしたらその後の人生が大きく変わる。きっとアナタは、いろんなものを無くす。」


「……っ、」

「ねえ、ちゃんと考えて言ってる?」



イミテの表情は相変わらず厳しく、イエローは一瞬ひるんだ。



「僕なりによく考えたつもりです!!復讐して元に戻るものなんて何もない。……だけど!」


でももう1度向き直り、自分の思いを伝える。



「やっぱり悔しくて、耐えられないんです…ッ!僕には帰る場所がないと思うと、憎くて、仕方がない…!」



イエローの大切なものを、この国の王が奪った。


その事実は変わることなく、永遠に彼女の中に刻み込まれている。



「だから、もしそのまま僕の人生が終わったとしても、復讐ができれば……満足なんです。」



その想いを我慢して生きるより、何とかしたいと思った。

たとえ自分の一生を犠牲にすることになったとしても。



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