哀歓善戦

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レッド、イエロー、そしてイミテの3人は、この前イエローが逃げる時に使った抜け道を使って逃げていた。


「こっちです!」


先頭を少し早足で歩くのはイエロー。

片手にイミテの弓を、そしてもう片方にはランプを持って先導していた。


その後ろをイミテが、1番後ろをレッドが、時々追っ手を気にするかのように振り返りながら歩く。



3人とも何も話さないため、コツコツ、という少しテンポの早い靴の音だけが暗い抜け道に響いている。

そしてその他に、逃げるのに集中しているから…とは少し違う、どことなく重い沈黙が辺りを包んでいた。




「あ!」


そのまま抜け道を進んでいると、やがて一筋の光が見えてイエローが声をあげた。


「着いたみたいね、出口。」

「どこに出るんだ?」

「森につながってるんです。」


イエローは1度この道を通ったことがあるので知っていて当然だ。


「森ならきっと見張りもいないはずだから。イエロー、ちょっといい?」

「あ、はい。」


人1人が通るのにちょうどぐらいの幅しかない狭い抜け道のため、イエローは体をずらしイミテと場所を交換した。

イミテは扉に手をかける。


「開けるね?」


イミテの言葉にイエローとレッドはこくりと頷く。



扉が開けられたと同時に、いっきに光が差し込んだ。

その眩しさに思わず目を細める。



「……あ、ここ気をつけて。少し段差になってるから。」

「あ…、ああ。」


ためらいがちに声をかけたイミテに、レッドも戸惑いながら答える。


どうやら牢屋でのやり取りが原因の気まずさはお互い消えていないようだ。

抜け道での重い静寂も…たぶんこれが原因だったのだろう。


何はともあれ、今は安全な場所に避難するのが先決だ。

レッドはイミテの後に続いて外に出る。


「!」


そして、抜け道を出た彼は驚いて目を見開いた。


そこにはあふれんばかりの草木や花がたくさん生えていたのだ。


「いい…ところだな。」


コンクリート造りの建物がほとんどだったニビシティの近くに、こんなに自然に満ちた場所があったなんて。


「ここまでくれば安全ですかね?もっと奥まで行きますか?」

「ううん。きっとまだ軍隊は私達が城の中にいると思ってるハズだから大丈夫。少し休もうか。」


そう言ってイミテは近くの木に背をあずけた。

イエローもコクリと頷きその場に腰をおろし、レッドもはあー、っと大きく伸びをする。



「よかったな、逃げきれて。」

「レッドさん…本当にありがとうございました…!レッドさんのおかげです、本当に…。」

「なんかそんな必死にお礼言われると照れるな。」

「真面目に聞いてくださいよ!もう!」

「はは。どういたしまして。でも、助けられたのはイエローも頑張ったからだぞ?」


先ほどの緊迫した様子とは一転して、なんとも穏やかな空気が流れている。



「……。」


イミテは黙ったまま、複雑そうな表情でそんな彼ら…いや、おもにレッドをジッと見ていて…。



「イミテさん?大丈夫ですか?疲れました?」


その視線に気づいたイエローがイミテに声をかける。


「…ううん。なんでもない。」


ほんのりと笑ってはいるが、明らかに暗い表情のイミテ。


「…よかったな!逃げられて。」


元気づけようと、レッドがあえて明るい口調でイミテに話しかけた。


「……。」


しかし、イミテの表情はますます暗いものになる。



「…イミテさん…?」

不安になったイエローがもう1度彼女の名前を呼んだ。


イミテはふう、と深く息をして呼吸を整えると、顔をあげ、レッドを見た。



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