哀歓善戦

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一通りのことを話し終わった時にはもう朝がきていた。


イエローの目からはポロポロと涙がこぼれ落ちている。

それは朝日に照らされ、まるで真珠のように光り輝く。



「イエローが泣くことじゃないでしょ?」


イミテはくすりっと笑って言う。


「うっ…、ぐすっ…。すいません…、悲しく、なっちゃって……。」


途切れ途切れに話しながら、イエローは涙をぬぐった。



「やっぱり優しいね、イエローは。」

「イミテさんのが、ずっとずっと、優しいです…!」


そう勢いよく言ったイエローからは、また涙がこぼれ落ちる。



「…私は、ね。あの日のあの選択、間違ってないって今なら思えるの。」


イミテは優しくほほえんで言った。



「レッドともグリーンともこうしてまた会えたし。それに、イエローとも出会えたから。」

「イミテさん…。」

「後悔なんてしてない。だからそんなふうに泣かれても困るだけなんだけど?」

「!」


イミテが笑みを浮かべてそう言うと、イエローもグッと涙をぬぐって花のような笑顔をみせた。




「あ、いたいた!イミテ、イエロー!」


二人を呼ぶ声がして、振り返ればレッドとグリーンの姿があった。



「どうしたんだよ?こんなとこで。」

「話ししてた。もう出発するの?」

「ああ。早いほうが武器も食料もいいものがあるからな!」

「そっか。行こう、イエロー。」

「はい…!」


二人は立ち上がり、レッドとグリーンの元へ近づく。


「ん?イエロー、目腫れてるぞ?まさか、ケンカしてたのか?」

「こんないい子とケンカなんてしません。レッドとグリーンじゃあるまいし。」

「なっ…!…じゃあ、何の話してたんだよ?」


レッドの問いに、イミテとイエローは顔を見合わせる。


「秘密。ね、イエロー?」

「はい!」


二人は楽しそうに笑っていた。










身支度をすませ、町にやってきた4人。

もちろん二ビシティとは反対方向にある町だ。


「軽いものから見ていくか。武器は一番後回しにして、まずはやっぱり食料とかか?」

「レッドさん!何よりも先に買わなきゃいけないものがありますよ!」

「えっ?」

「イミテさんの服!…です。」


イエローの言葉に、レッドは改めて今のイミテの格好を見る。

グリーンのマントを借りて羽織っているため特に意識はしていなかったが、マントの下は軍服なのだ。

町の人が騒いでいないのはまだイミテの情報は伝わっていないからのようだが、いつ情報が伝わるか分からないし、いつ二ビシティの軍人がイミテを探しにくるのかも分からない。



「あ…、確かにそのまま出歩くのは危険だな。」

「でしょう?まずは服屋に行きましょう。」

「あ、だったら、私1人で服買ってくるから、その間にレッド達は食料とかそろえておいてよ。」


そのほうが時間短縮にもなるし、と続けたイミテの提案を、グリーンが「ダメだ。」とバッサリ却下する。



「1人になるのはなるべく避けろ。何があるか分からない。」

「別に今は弓矢もあるし、何か起きてもなんとかなるって。」


「お前は昔から自分の力を過信しすぎだ。」

「…。それを言うなら、グリーンは人のこと心配しすぎだと思うけど?」


対抗するように返したイミテに、グリーンはため息を1つつき歩き出した。


「とにかく、行くぞ。」


イミテも納得いかなそうな表情をうかべながらも、歩き出す。



「………。」


そんな二人の様子を見て、レッドは少ししかめっ面になる。


「レッドさん?行きましょう?」

「…おう。」



なんだかイミテとグリーンを見ていると、お互いがお互いのことを分かり合っているような気がして心の中で複雑な感情が生まれるのだ。

この正体が何なのか、彼はまだハッキリとは気づいていないが。



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