哀歓善戦

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レッドとイミテ。

2人は城門の前の茂みに身をひそめていた。


辺りは日が暮れてすっかり暗い。


「夜とはいえ、見張りが厳重だな。」

「うん。でも人数はいつもと変わらないし、見張りの軍人も特に緊張した様子は見られない。……今のところ、これといった罠は仕掛けられてなさそう。」


警備はいつにも増して特に多い…というわけではない。

まあ、イミテの脱獄のこともあって若干増えている気もするが…。



「それと、いつもと変わってなければ警備が厳重なのは正門と裏門だけ。」

「へ?」

「行けば分かるよ。ついてきて。」


イミテが歩き出し、レッドも後に続いた。







数十分歩いて、たどり着いたのは城の西側。


「ここなら軍人もいないでしょ?」

「いや、たしかにいないけど…、それってここから中に入れないからだろ?」


実はこの城には、南にある正門と北にある裏門しか出入りする手段がないのだ。

彼らが今いる西側は数メートルもある外壁がそびえ立っていて、この壁を突破して城の中に入るのは不可能に近い。

現に、いまだかつてここから侵入した者はいない。



「普通の人なら絶対に無理だけど…。」


イミテはそう言って軽く笑うと、背中にかついでいた矢立てから矢を1本とり……壁に向けて放った。

矢は壁にカッという音をたててささり、そこから上に向かって頑丈な蔓がはしご状に伸びていく。


「なるほど。これを登れば中に入れるってことか。」

「うん。あと、ちょうどここ王室の真下なんだ。」

「え?」


イミテの言葉につられて上を見ると、たしかに城壁に隣接して高い塔のようなものが建っている。

蔓はしっかりとその塔のてっぺんのバルコニーまで続いていた。



「まあ、王室で待ち伏せされてたら逃げ場がないけど…」

「うーん…じゃあいざとなったら塔から飛び降りるか。」

「え…」

「イミテの能力でこの辺に草のクッションとか作れないか?」

「!うん、できる。」


イミテは新たに足元の地面に矢を放ち、その矢からぶわあと大量の草をだした。

その間、飛び降りるなんて大胆な考え自分じゃとてもじゃないけどうかばなかった…と、心の中で少し感心する。


無鉄砲に思えた今回の偵察だが、意外と順調にことが進んでいるのかもしれない。



「よし!行くか!」


レッドがギュッと蔓を握る。

やる気じゅうぶんだ。


それを見て「城の構造分かってるから、私が先に登る。」と言おうとしたイミテだったが、今自分がワンピースを着ていることを思い出し、大人しくレッドの後に登ることにした。










今日はそれほど風が強くなかったのが幸いだ。

蔓が特に揺れることもなく安定して登ることができる。


蔓を登り始めて数分が経ち、ようやく半分ぐらいまできた。


「うっわ!」


すると、レッドが声をあげて少し下がる。


「どうしたの?」

「あっぶねー。今、サーチライトが頭をかすって…、うわ!また来るぞ!」

「サーチライト…、いつもはないんだけど、さすがに警戒してるのかもね。」



イミテはウエストポーチから手榴弾を取り出した。

そして口でピッと栓をぬき、城の庭に向けて放り投げる。



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