哀歓善戦

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目の前には少年。

武器を構える隙もない。

まさに絶対絶滅。



「イエロー!そこの扉から逃げて。」


せめてイエローだけでも…と、イミテは彼女に勢いよく言う。


「い、嫌です!イミテさんをおいて逃げるなんて…!」

「いいから。レッド達にこのことを伝えてきて。お願い。イエローのが扉に近いでしょ。」



イエローはチラリと横目でイミテと自分の位置関係を確認する。

イミテはイエローを庇うように一歩前にでているから、確かにイエローのほうが扉には近い。


「……。」


それが分かったのか、イエローは決意したように頷いた。



しかし少年がそれを黙って見逃すはずがない。


「逃げられると思ってるのか?」


少年が手袋をした手をイエローに向けたのを見て、イミテが「いいの?」と彼に言った。


「もしアナタが彼女に攻撃すれば、私はその隙に弓を引ける。動かないほうが身のためだよ。」


イミテは手にしていた弓矢を見せつけるように胸の前に持ってきて笑った。

少年はあざ笑うかのように「甘く見るな。」と一言言い、そして片手をイエローに、もう一方の手をイミテに向ける。


「腕は2本ある。」


まさか両腕とも不気味な力を使えるとは思っていなかったイミテ。

次の手を考える暇もなく、ゴオオ…と不気味な音を立て手袋から真っ黒な固まりが渦をまきながら大きくなっていく。


「っ!」


イミテはとっさに弓を構えるが、もうすでに手遅れだった。


















「え…?」


気がつけば辺りには何もなかった。

そう…何も。

われた窓ガラスも、少年もイエローも…、自分が今までいた部屋自体がなくなっているのだ。

ただ漆黒の世界が広がっているのみ。



「…!イエロー!?どこ!?イエロー!」


今のこの状況よりも、とにかく気になるのは彼女の安否だ。

彼女は攻撃する手段がないから、あの少年に狙われればひとたまりもない。



「イエ「イミテさん!」


後ろから声がして、まさかと思って振り返ると、そこにはまさに探していた彼女の姿があった。


気づかなかった―…。

……人の気配なんて、しなかったのに。



「イエ、ロー…?」


不信に思って名前を呼べば、彼女は「はい?」と小首をかしげる。

その反動で柔らかく揺れる金髪も、きょとんとしたややあどけない顔も……イエロー、だ。

それは、確かなのに…。


「(なんだろう、この違和感は…。)」


変に胸がざわつく。

それを無理矢理打ち消すかのように、イミテは目の前にいる彼女に聞いた。


「イエロー…どこにいたの?……怪我は?」

「怪我はしてません。気づいたら目の前が真っ暗になって…、イミテさんが僕を呼ぶ声が聞こえたので、とりあえずそれを頼りに歩いてきたんです。」


「イミテさんこそ、怪我してませんか?」と心配そうに自分を見つめるイエロー。

そんな彼女にイミテは「平気。」と笑顔を返す。


……イエローで間違いない。

自分は何に対して違和感を覚えていたんだろうか…。

もしかしたら、この闇が気配を消したり、不安にさせたりする作用をもっているのかもしれない。


そう思いイミテは辺りを見回すが、本当に真っ暗で、特に対した手がかりは見つけられそうにない。



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