哀歓善戦

□11
1ページ/9ページ



じんわりと、じんわりと軽い痛みが広がっていくような感じがした。



「(なんだろう…、むずがゆいな、この感じ。)」


まるで今の自分の心が反映しているみたいだ。


分からない。
彼の、今の気持ちが。



「……レッド、さ…、なにに怒ってるの?」


イミテがゆっくりと口を開く。

理由を聞かないと始まらない。


でもレッドの2つの茶色がかかった赤い瞳は、イミテを見据えたまま…悲しい色を見せた。



「……自分で考えろ!」


……突き放された。


「…ッ!言ってくれなきゃ分かんない!言いたいことがあるなら言いなよ…!」


レッドの態度にイミテも少々苛立ちを覚え、声を荒げる。



…分からない。

彼の考えていること、行動が。

理解できない。


何が、起きてしまったんだろう…?
















あれからレッドとイミテの間には気まずい空気が流れたまま、夜になった。


「今日も野宿したほうがいいですよね?」

「ああ。町に戻るのは危険だ。」


グリーンとイエローがポツリポツリと会話をしている。


「あ…火が消えそう。僕、薪拾ってきます。」



そう言ってイエローは、少し離れた場所に向かう。


薪を拾いながら彼女は、チラリと後ろを盗み見した。


レッドもイミテも焚き火をはさみ、お互いに背を向けるような形で座っている。

あれから2人とも、一言も言葉を交わしていない。


レッドにいたっては、誰とも。




「レッド、ちょっと来い。」



さすがに見かねたのか、グリーンが座っていたレッドの腕をつかみ、立ち上がらせようとする。

レッドはそれを振りほどき、自力で立ち上がる。



そんな彼の態度にグリーンははあ、と1つため息をついてみせると、森の奥を目指して歩き始めた。

レッドもただ、黙って彼について行く。









しばらく歩いたところで、そろそろいいだろう、とグリーンは振りかえった。


「レッド。お前、イミテの何に怒っているんだ?」


まさに単刀直入。

レッドには遠まわしに聞くよりこっちのほうがいいことを、グリーンは知っている。


「………。」


しかし、レッドはグリーンと目を合わず無言のままそっぽを向いた。



「俺に言いたくないならそれでいいが、イミテとはちゃんと話し合え。」

「……。」

「このままというワケにはいかないことぐらい分かってるだろう?子供みたいな態度をとるな。」


グリーンがレッドを少し睨んで諭すように言うと、ようやくレッドが口を開いた。



「……イエローのときも、二ビシティの城に忍びこんだときも、今回もそうだった…っ」



静かに、話し始める。



「話して直ったって意味ない。もっと根本的な問題なんだ…!」



レッドはそう言いながら、拳をギュッと握りしめる。



「…何があった?」


グリーンの声はさっきよりも低く、表情も険しくなっている。

レッドは観念したように、ようやくグリーンと目を合わせた。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ