哀歓善戦

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周りには特に何もない、殺風景な草原。

そんな中を先頭をきって歩いていたレッドは「ふわ〜ぁ…」と気の抜けた欠伸をする。


「レッド、気を抜くな。周りに注意して歩け。」

「だって周りになんもねえし、いい天気だし。」


まさにご機嫌という言葉がぴったりなレッドを、グリーンは呆れた顔で見ていた。



「何だよ、グリーンは相変わらず真面目だなあ。イミテとイエローもそう思うよな?」


レッドが振り返れば、イエローはにっこりと笑って答えた。


「はい!お日様が気持ちいいと元気がでますよね!」

「だよな!イミテもそうだろ?」

「……。」


レッドが問いかけるがイミテからの返事はない。



「イミテ?」


不思議に思ってレッドが目を向ければ、彼女は太陽に照らされる草を見つめていた。


優しく、愛しそうに。

でも…どこか儚げに。



「……。」



レッドもイエローも、グリーンも。

しばらくそんな彼女に見とれていた。



「あ…、え?」



ふと3人の視線が自分に向けられていることに気づいたイミテは、きょとんとした顔で見つめ返す。



「なに?どうかした?」

「あ、いや…イミテって草が好き…なんだっけ?」


レッドは少し控えめにたずねた。

何しろ自分はイミテの昔の記憶が一切ない。


自分の何気ない言葉が彼女を傷つけてしまいそうで怖かったのだ。



「うん、まあ…。」


イミテは苦笑いをうかべて、何とも歯切れの悪い言葉を発した。



その様子を見ていたグリーンは、額にシワをよせ顔をしかめると「イミテ。」と名前を呼んだ。



「ん?」

「あまり気にするな。」

「うん。ちょっと思い出してただけだから。」


イミテはふわりと笑う。

…その目にはやはり、悲しさが見え隠れしているのだけれど。


レッドは2人にしか分からない会話が気に入らないらしく、少ししかめっ面。










またしばらく歩くと、彼らの前に大きな山が立ちはだかった。


「こんな山、地図にはありませんでしたよね?」

「でも方角的に、シオンタウンに行くにはコレこえなきゃいけないみたいだな。」


その山は結構な高さがあり、向こう側までたどり着くには数日かかりそうだ。



「行くぞ。」



前に進まなければ意味がないとでもいうように、グリーンが先頭をきって進む。





山の中は背の高い木が多く、予想以上に薄暗い。

その上足場も急だ。




「なあ、前にニビの王室に行った時みたいに、頂上まで蔓伸ばせないのか?」


レッドはイミテの持っている弓に目を向けながら言う。

彼が言っているのは、イミテの緑の能力のこと。

確かに彼女の能力は蔓を伸ばすのは容易なのだが…。



「できないよ。あの時は距離がそこそこだったからできたけど、さすがにこんなに距離があるとね。」

「そうなのか?」

「うん。私の能力は力が制限される型だから。レッドのはたぶん違うけど。」

「型…?」


レッドは思わず復唱した。


「イミテ、何のことだ?」


グリーンも興味があるらしく振り返った。



「うーん…、軍にいる時に教えられたんだけど、」



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