哀歓善戦

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翌日。
まだ夜が明けきってなくて薄暗いなか、グリーンは寝袋からでて上着を羽織った。

そして隣で寝ているイエローを起こさないように、ランプに火を灯す。


「う…ん…?」


なるべく静かにその作業をやっていたのに、その光りがまぶしかったのかイエローが目を覚ました。


「グリーン、さん…?」

「悪い。まだ少し寝てろ。」


グリーンはそう言うとランプを持って立ち上がった。


「レッドさんとイミテさんのこと探しに行くんですか…?僕も行きます!」

「いや、いい。お前はここで荷物をみてろ。」

「…グリーンさん、昨日ほとんど寝てないでしょう?そんな状態で行っても危険ですよ。」


そう…あのあとすぐに休んだはいいが、グリーンは一睡もしていなかった。

イエローはちょくちょく目を覚まし、物思いにふけっている彼の様子を見て心配していたのだ。



「僕と一緒に行くか、このまま朝まで眠るか、どっちかにしてください!」



キッと彼を睨み、そう言ってのけた彼女。


まだグリーンとイエローは出会ってから日が浅いうえに、今まであまり話す機会もなかった。

よく知らないからどう接していいか分からないものの、イエローはイエローなりに何とかしようとしているのだ。


「…好きにしろ。」


グリーンもグリーンで彼女のことはよく知らない。

でも彼女が自分のことを心配していることはよく分かる。



「言われなくても、そうします…!」


ほんの少し憎まれ口にも思える返事を聞いて、グリーンは気づかれないようにフッと笑うと歩きだした。

自分の後ろから聞こえる、小さな足音を聞きながら。










やはりまだ薄暗いうちに探しに来て正解だった。

グリーンはそう痛感した。


彼の足元には、イミテの弓。

微かな月明かりを受けて、弦が銀色に光っていたのだ。


「これ…イミテさんのですよね!?」


イエローもそれに気がつき声をあげる。


グリーンは静かに辺りを見回した。

すぐ近くには崖がある。

崖下を見てみるが、暗すぎて何も分からない。


「イミテさーん!レッドさーん!」


イエローも崖下に向かって叫ぶが、返ってくるのは崖で反響した自分の声のみ。


「うーん……いないんでしょうか?」


複雑そうな表情をうかべるイエローに、グリーンはイミテの弓と自分の上着を手渡した。


「え…?」

「持ってろ。様子を見てくる。」

「こんな急な崖、降りられないですよ!」


慌てるイエローの言葉を無視し、グリーンは愛用の刀を鞘から抜くと、地面に突き刺した。

ゴゴゴ…と地面の奥深くから地響きのようなものが聞こえてくる。


「や……!」

一瞬、大地が大きく揺れ、イエローはその場に転ぶ。


彼女が次に顔をあげたとき、すでにグリーンの姿はなかった。




「グリーンさん!?」

驚いて崖下を見下ろせば、何やら土で出来た階段のようなものができている。


「あ、能力を…使ったのか…。」

イエローは状況を理解してほっと胸をなで下ろした。


……一言ぐらい言ってくれてもいいのに…。


イエローは少し拗ねたような表情になり、次に盛大なため息をついた。



どうやら彼と仲良くなるには、まだまだ時間がかかりそうだ―……。



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