哀歓善戦

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「何年か前まで…、俺の家は町で一番の資産家だったんス。」


月明かりの下、ザアアという川の流れる音を聞きながら、ゴールドは昔を思い返し話し始めた。















それは、3年前の話。



ゴールドは、ワカバタウンという町で生まれ育った。

そこは小さいながらも活気あふれる町で、彼はこの町に生まれたことを誇りに思っていた。



そんな町の中でひときわ目立つ、大きな一軒の家。

周りは鉄でできた頑丈な門に囲まれていて、見るからに豪邸。


そここそがゴールドの家であった。






ある日のこと。


ゴールドはダダダ、と慌ただしく階段をかけ上がると、

「母さん!」

と、そのまま部屋のドアを勢いよく開けた。



ゴールドの大声に反応し、ベッドに寝ていた女性はため息をつきながらドアに目を向ける。



顔も髪色もゴールドによく似ている、その女性。

そう、ゴールドの母である。



そしてそのベッドの近くのテーブルには何種類もの薬が置いてあった。

どうやら彼女は病気をわずらっているらしい。


しかしその血色はよく、表情も明るかった。



「こら、ゴールド!もっと静かに入ってこれないの?」


言葉では怒っているが、それが彼女の本心ではないことをゴールドは知っている。

だから起きあがった彼女に嬉しそうに話しかけた。



「母さん、さっき外に軍隊がいたんだ!」

「あら?今日、何か行事でもあったかしら…?」

「町の外の盗賊を取り締まるんだってさ!ハヤトさんもいたんだ!」


ハヤト、というのは軍人の1人で、ゴールドの母の古くからの友人だ。

たまに家に見舞いに来たりしている。

正義感あふれる人で、ゴールドも彼によくなついていた。



「そう…。無茶しなきゃいいけどね。」

「大丈夫さ!ハヤトさんは強いから!俺もいつかハヤトさんみたいな軍人になるんだ!」

「ふふ。ゴールドがなれるかしら?軍人は戦いが強いだけじゃダメなのよ。心が優しくなきゃ。」

「優しく…?」

「そうよ。困っている人とか弱い人がいたら助けてあげる…。そんな優しい心が必要なの。ゴールドにできる?」


彼女が少しあざけた声を出せば、ゴールドはむすっとしながら答えた。



「できるさ!俺は、誰よりも、優しくて強い軍人になる!」



キラキラと目を輝かせながら言うゴールドに、彼女は自身の夫…、つまりゴールドの父の面影をみた。


……前向きでまっすぐな人だった、父の。




「じゃあ…そろそろ…、コレをあげてもいい頃ね。」


彼女はそう言って立ち上がる。


「母さん!?寝てないと…、」

「大丈夫よ。今日は調子がいいの。」


ゴールドの制止をかわし、彼女がベッドの下から取り出した黒い革製の箱。

その蓋を開ければ、そこには1本の剣がはいっていた。



「これは…?」

「父さんの片見の剣よ。いつかそのときがきたらゴールドに渡してくれ、って言ってたの。」

「父さんの…。」


そう呟き剣を見つめたゴールド。



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