哀歓善戦

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早朝、宿を出た彼ら。

半日ほど歩いたところで、ようやくシオンタウンに着いた。



「ここがシオンタウンですか…。なんだか不気味な町ですね。」


イエローが町並みを見てそうつぶやくのも無理もない。

この町は昼間だというのに人の姿は全くなく、町全体が静まりかえっていたのだ。


人はいることにはいるのだが、どうやら皆、家の中にこもっているらしい。

どの家もカーテンを閉め切った状態で、まるで何かにおびえているようだった。



「思いっきり警戒されてるッスね、俺ら。」


そう、町の人達はときおり様子を伺うために、チラチラとカーテンの隙間からレッド達を覗いていた。



「完全に怪しまれてるみたいだな。」

「なんか居心地悪いね。」

「というか、このまま歩いてると目立つんじゃないでしょうか?」


イエローの言葉にはたと全員の足が止まった。

確かに周りに人がいない町中を5人という大人数で歩くというのは…あまりに目を引く。



するとグリーンがスッとゴールドに向けて手を伸ばした。


「?」

「……ゴールド。発信機を貸せ。」

「何スか?急に。」

「ブルーに連絡をとる。」


グリーンはそれだけ言うとせかすような目でゴールドを見た。


「できるんスか?これ、盗聴器だから一方的に会話が聞かれるだけなんでしょ?」


ゴールドは渋々といった様子で、グリーンに発信機を手渡す。


グリーンは屈んで落ちていた小石を拾い上げ、続いてバッグから空きビンを取り出した。



「「「「……?」」」」


グリーン以外は何をする気なのだろうと首を傾げる。


すると………、


ギイイイイイ!


と、まるで猫がガラスで爪を研ぐような鋭い音が辺りに響き渡った。



「お、おいグリーン、何やって…!」


ギイイイイイ!!



「!;」


レッドが止めようとしたが、脳まで響く嫌な音に耳をふさぎ思わず後ずさった。


「グリーン!」


イミテが彼の名前を呼ぶが、その騒音にかき消され全く届いていないようだ。



「……イミテさん、僕、頭がガンガンしてきました…」


イエローはふらりと壁に手をつき、なんとか自らを支えていた。


「ちょ…イエロー!?あー!もう…!;」


さすがにこのままではいられない、としびれを切らしたイミテは、背中に担いでいた矢立に手を伸ばした。

おそらく矢でビンを割ってしまおうと考えたのだろう。


スッ、と彼女は矢を構える。




と、その時……






「あーもう!うるさいわよ!いい加減にしてよねっ!」


建物の陰から、ブルーが頭を抱えながら現れた。


それを確認して、グリーンは手を止める。

ようやく嫌な音が止んだ、と彼以外の誰もが安堵のため息をついた。



「グリーン!アンタ、あたしの耳が悪くなったらどうしてくれるのよ!」

「知るか。さっさとでてこないお前が悪い。覗き見して何をたくらんでた?」

「う……。」


グリーンにしれっと言われブルーは言葉につまる。



「ブルー、俺達のこと見てたのか?」

「……ええ。あんた達がシオンタウンに入った時から後を付けてたの。」


ブルーは降参したように頬に手を当てて、ため息をはきながら言った。


「いきなり出て行って脅かそうとしたのに…。」

「ブルー先輩ってイタズラ好きなんスね…;」


ゴールドが苦笑しながら言えば、彼女はにっこりと満面の笑みをうかべた。



「そんな悠長なことして…ナツメに気づかれたらどうするつもり?」

「大丈夫よ。今はいないもの。」

「え!?逃げたのか!?」

「いいえ。おそらく報告か何かをしに行ったんでしょうね。軽装備だったし。そのうち戻ってくるわよ。」


ふとイエローがキョロキョロと辺りを見回し、首を傾げた。


「シルバーさんはどこにいるんですか?」

「まだシオンタワーを見張ってるわ。いつナツメが来るか分からないから…。」

「え…じゃあシルバー、昨日から休みなしで見張ってるの?」

「ええ。少しは休みなさいって言ってるんだけど…。」


「じゃあまずはシオンタワーに行こうぜ!この中の誰かがシルバーと交代してやって、それから作戦をたてよう。」


レッドが明るく仕切ると、ブルーは「案内するわ。付いて来て。」と歩き出した。



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