哀歓善戦

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シオンタワーはかなり近く、少し歩いただけで着いた。

廃れた感じにそびえ立つその建物は、この町の不気味さを引き立てている。


そんなタワーの裏側の死角となるところに座り込んでいたのは、フード付きの黒いマントをかぶった1人の少年。



「こいつがシルバーッスか?」


先陣をきって進んでいたゴールドが彼に近寄り、顔をのぞきこむ。


「目つぶって寝てるッスよ?だらしねーやつだなー。」

「あ、ゴールド。それきっと寝てるんじゃなくて…」


「起きている。」


ブルーの言葉を遮って、シルバーはパチリと目を開けた。

そしてギロッとゴールドを睨みつける。


「な、なんだよ!;」

「目をつむった方が、他の感覚器が優れるんだ。それぐらい知っとけ。爆発頭め。」

「なんだと!喧嘩うってんのか、てめー!」


「2人とも落ち着いてください!」


喧嘩を始めた2人をイエローが慌てて止めにかかる。



「あらあら。あの2人、性格合わないみたいね。」

「まるで正反対だもんな。」


ブルーとレッドの会話を聞き、イミテは笑みをうかべて言った。


「私は案外いい友達になると思うけど?」

「えー。そうか?」

「レッドとグリーンもそうだったから。最初喧嘩ばっかりしてたじゃん。」


「ああ…、確かに。」


イミテの言葉にレッドは思い出したように苦笑する。


「だからゴールドとシルバーもきっといい友達になるよ。」


イミテがいまだに喧嘩をしている2人を見て言う。


すると彼らは躍起になって、

「「何でこんな奴なんかと!」」

と、口をそろえて言った。


「はは。息ぴったりだな。」

「「……!」」


レッドが言うと、ゴールドとシルバーはお互いに顔を見合わせ、ふい、と反対方向に顔を背けた。





「シルバー。」


ブルーが名前を呼ぶと、シルバーは荷物を持って彼女の隣に並ぶ。


「じゃあ、あたし達はもう行くわね。」

「え、もう!?少し休んでから行けば?シルバーも疲れてるみたいだし。」

「そうしたいんだけど、この町にはずいぶん長居しちゃったから結構怪しまれてるのよ。宿の人も疑ってるみたいだし…。」


ブルーははあ、と深いため息をつく。



「何かあったのか?」

「…怪しんだ宿の女将がね、あたし達がいない間に部屋に入って荷物をあさってたのよ!」

「えっ!?そんなことする人いるんですか!?」


「あたしも驚いたわ。逆にゆすってやったけどね。『バラされたくなかったら何すればいいか分かるわよねえ?』って。」


ブルーはオホホ!と高らかに笑った。


「それはちょっと…女将さんに同情しちゃうね。」

「相手が悪かったな。」

「女って怖いッスね。」


「聞こえてんのよ。」


小声で繰り広げられている会話を、ブルーは睨んで止める。



「あー、ブルー!ゴールドが仮面の男についての噂、聞いたみたいなんだ!」

「え…ほんと!?」

「はい!この前言いそびれちゃったんスけど、仮面をかぶった男が北に行くのを見たやつがいるって!」


ゴールドが得意げに答えれば、ブルーは顔をしかめた。



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