□跡滝(?
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「ね、跡部」






「ア〜ン?」






「こっち来て」






「??」






「髪に桜が…」






「アン?」






―……チュッ






「!!!萩之介?」






「クスクスッ…ここに悪戯。」






これがいつもの俺達。






俺達は幼稚園の頃から一緒に悪戯したりして、一緒に怒られて…






そして、怒られた後はいつも俺は泣いてたらしい。






そうすると跡部の手が伸びてきて、俺の頭を優しく撫でて、髪を触ってくれた。






それが幼い頃の俺達。





今も昔も結局は変わらなくて、俺達に変化があったとしたら身長が伸びて、跡部は前以上にかっこよくなった。






そして、頭もよくなった。






跡部はちゃんと成長してるのに、俺だけ成長してないみたいだ。






まるで俺達の心や想い出を置き去りにしたまま体だけ少し成長したようにさえ思う。






結局は俺は何も変わらなくて、変えようともしなくって。






だから、レギュラーも宍戸に取られたんだ。
宍戸はレギュラーから落ちてから、鳳と一緒にずっと遅くまで練習して見事レギュラーに返り咲いた。






昔の宍戸は高飛車で、自慢屋であんなではなかった。






これは宍戸の成長。





周りも成長してるのに俺だけ…






俺だけが変化もなく成長してないコトを改めて知る。






けど、知った時はもう遅くて…






取り残された後……






景吾も宍戸も岳人もジローもみんな俺から離れてく気がした。






みんな俺の前から消えてしまう気がして………






泣きそうになる。






壊れそうになる。






恋人や友達、後輩達から……






見放される孤独感に耐えられなくて。






俺はまた傷を…






深い傷を……





刻んだ。






この傷を刻む度に感じる刃物の感じ。






切ったところから流れ落ちる綺麗な赤。






これに助けを求めるコトしか出来ない俺をゆるしてください。

 

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