APPLAUSE
□ABC-受験生へ-
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【A=I like him all the better for his shyness.】
※ all the +比較級+ for +名詞. =〜だからそれだけ一層
「黒崎くん、手…繋いでいい?」
日もすっかり落ちた、帰宅ラッシュの繁華街。
先を歩く黒崎くんが、あたしの言葉を受けて勢いよく振り返った。
そんな黒崎くんの顔は驚愕に彩られてはいたけれど、心なしか困ったような表情で…
『あ、ご、ごめんなさい!』と、出しかけた手を咄嗟に引いた。
付き合って3ヶ月、未だ手も繋いだことが無いからどうしようか悩んだけれど。
歩みの鈍いあたしは、足早に歩く大勢の人たちとあちこちぶつかってばかり。
だから、思い切って大好きな人に頼んでみたの。
引っ張って貰えばもう少し早く歩けるなんて、手を繋ぐことへの憧れに一つの理由をこじ付けて。
「何キョドってんだよ。イイに決まってんだろ!?」
そう言って黒崎くんは、あたしの手を半ば引っ張るように取ってくれた。
あたしは嬉しくて、心持ち軽くなった自分の足に微笑みを浮かべていたら…
斜め上から、一つの呟きが聞こえてきた。
「キョドってんのはオレの方だな…どうやって手を繋いだらいいのか、実はずっと考えてた」
薄暗い中、自動車のヘッドライトに一瞬照らし出された黒崎くんの顔。
その顔が少し赤かったことは、見なかったことにした。
彼は恥ずかしがり屋だから、かえって好きです。
[I like him all the better for his shyness.]
Fin.