STORY

□Beside You
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できるなら。
できることなら。

『貴方の隣』という特等席で。



ずっと並んで歩いていけたらいいな、と思う。






【Beside You】






一緒に帰るようになったのは、もう随分前なのに。
未だ緊張してるのって可笑しいかな、と思いつつ。
一歩先ゆく彼の背中を見つめた。

結構細身なのに、見る背中はとても大きくて。
何だかドキドキしながらも、少しだけ悲しくなってきて。
ぼんやりとその背中を見つめながら、小さく息を吐いた。


思えば、この広い背中にいつも護られてきた。
どんなに苦しくとも、どんなに辛くとも。
彼は迷う事なく、皆の為に力を奮い続けた。
そんな彼に護られてばかりで、彼を護ってあげる事が出来なかった私。
己の無力さを思い知り、彼の為に役に立てなかった事を嘆き。

それでも彼の傍を離れる事が出来なくて。

いまでもこうして、彼の傍に居る訳だけれど。


「井上」
「………え?」
「大丈夫か?」

ぼおっとしてた私を不安そうな顔で私を見る彼に。
心配掛けてしまった事を恥じながら、慌てて笑い掛けた。

「大丈夫だよ、黒崎くん。ちょっとぼーっとしてた」

ごめんね、心配かけて、と笑みを零すと。
漸く安心したのか黒崎くんは、そっか、と言って、笑い返してくれた。

そんな黒崎くんに小走りに近付いて横へと並びながら。
黒崎くんに聞こえるか聞こえない位の小さな声で。

ごめんね、と呟いた。


「え?何か言った?」

呟いた声が何となく聞こえたのか、不思議そうに私を見る黒崎くんに苦笑を零しながら。

「あのね」
「ん?」
「ずーっとね、こうやって黒崎くんの隣に居られたらいいな」



どこにいるよりも、貴方の隣がいい。
貴方の隣にいると、何だか貴方と一つになれたようで、とても嬉しくなる。


このままずっと傍に居られるような。
傍にいるのが当たり前のような。

そんな一生を過ごせたなら、それはとても『幸せ』な事。


だから。


「って思うの」

少し顔を伏せながらそう言って、言った事を恥ずかしく思いながら黒崎くんへと顔を向けると。
彼は一瞬呆けた後、徐に微苦笑しながら、そっと私の頭に手を載せて。

それから、くしゃくしゃと小さく髪を撫でてくれた。

「何言ってんだよ」
「え?」

おどけるような、それでいて優しい口調でそう言う黒崎くんに。
きょとん、と首を傾げながら、彼を見つめると。
黒崎くんはそんな私を見ながら、小さく笑みを零して。

「あったり前な事、言ってんじゃーねーよ、ったく。ずっと一緒に決まってるだろ」
「黒崎くん?」
「井上が嫌だっつっても、絶対に離さねーからな」

覚悟しとけよ、なんて。
ニヤリと笑いながら、でも優しさを向けてくれるその瞳と、その言葉に。


嬉しくて。
とても嬉しくて。

思わず、ポロリと涙を零してしまった。


「い、井上?」

突然の涙に吃驚したのか、慌てる黒崎くんが少し可笑しくて。
クスクスと小さく笑いながら、ありがとう、と伝えて。
すぐ横にある黒崎くんの左手を、そっと握った。

黒崎くんの手は、私よりも大きくて、そして暖かくて。
その手の温もりを幸せに感じながら、彼へと笑顔を向ける。


「ずっと隣で、一緒に歩いていきたいな」

そう心を込めて伝えると、欲目かも知れないけれど黒崎くんは嬉しそうに笑みを讃えてくれて。
そして、強く私の手を握り返してくれながら。

「勿論」

力強く返してくれた言葉に、また嬉しくなって。


満面な笑顔を、大好きな彼へと贈った。







どんな時でも、どんな場所でも、どんな姿でも。

貴方の隣で並んで歩いていきたい。



それは未来永劫、ずっと願う。

私の本当の気持ち。


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サイトの英題をタイトルに、大好きなつばさ様に相互で頂いたもの。
当サイトの家宝であります!!


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