小説部屋
□遡る夜 歩き出す朝
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ベルメールさんを失い、ナミが魚人に連れて行かれた夜―
今朝まで三人で過ごしていた家に、一人立ち尽した。
鍋の中にシチュー
オーブンには鴨肉
ベルメールさんが作ってくれた、いつにないご馳走。
ベルメールさんとナミと私…
三人で食べる筈だった。
なのになんで部屋に誰もいないの?
三人分のシチューも、鴨肉も、一人じゃ食べきれないよ。
いつも窮屈に感じていたベッド。
いつも三人で、並んで横になったベッド。
一人で眠るベッドは私には広すぎるよ。
これからどうしたらいいの?
それでも泣いたのはあの夜だけだった。
でも、そうだ。
私は本当は泣きたかったんだ。
あの夜も―
あの夜も―
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