小説部屋
□気にいらねェアイツ
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後部甲板
サンジは苦々しい表情で、煙草をふかしていた。
不機嫌な理由はもちろんナミに殴られた事ではない。
怒ったナミさんも素敵だし、例え握り拳でも触れて貰えて嬉しいくらいだ。
原因は当然ゾロ。
「クソムカつくぜ…。」
共に旅に出るようになりずいぶん経つが、アイツだけは気に入らない。
そもそも出会いからして最悪だった。
「剣士として最強を目指すと決めた時から命なんてとうに捨ててる。このおれをバカと呼んでいいのはそれを決めたおれだけだ。」
…ばかばかしい。
野望?
そんなもん捨てちまえばいいじゃねぇかよ。簡単だろ、野望を捨てるくらい。
ジジィに助けられた時、おれは夢を捨てた。
ジジィと共に生きる事がおれに出来る償いなのだと。
そうさ、夢なんて簡単に捨てられる。
そう言い聞かせていたんだ。
なのにあの野郎は…。
煙草を荒々しく揉み消すと、直ぐにまた新しいのをくわえて火をつける。
捨てた夢を再び胸にして、新たなる旅へと出た。
幾度となく大変な目に遭って来た。
いつもあの野郎に遅れをとってしまっているのも腹立たしい。
人が寝ている間に勝手に戦ってただと?
お洒落に茶を飲んでたら、足を切り落としてでも戦おうとしていただと?
「…けっ。」
空に向かって思いきり煙を吐き出した。
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