小説部屋

□気にいらねェアイツ
3ページ/8ページ

後部甲板

サンジは苦々しい表情で、煙草をふかしていた。
不機嫌な理由はもちろんナミに殴られた事ではない。
怒ったナミさんも素敵だし、例え握り拳でも触れて貰えて嬉しいくらいだ。

原因は当然ゾロ。

「クソムカつくぜ…。」

共に旅に出るようになりずいぶん経つが、アイツだけは気に入らない。

そもそも出会いからして最悪だった。

「剣士として最強を目指すと決めた時から命なんてとうに捨ててる。このおれをバカと呼んでいいのはそれを決めたおれだけだ。」

…ばかばかしい。

野望?

そんなもん捨てちまえばいいじゃねぇかよ。簡単だろ、野望を捨てるくらい。


ジジィに助けられた時、おれは夢を捨てた。
ジジィと共に生きる事がおれに出来る償いなのだと。

そうさ、夢なんて簡単に捨てられる。

そう言い聞かせていたんだ。

なのにあの野郎は…。


煙草を荒々しく揉み消すと、直ぐにまた新しいのをくわえて火をつける。

捨てた夢を再び胸にして、新たなる旅へと出た。

幾度となく大変な目に遭って来た。
いつもあの野郎に遅れをとってしまっているのも腹立たしい。

人が寝ている間に勝手に戦ってただと?
お洒落に茶を飲んでたら、足を切り落としてでも戦おうとしていただと?

「…けっ。」

空に向かって思いきり煙を吐き出した。





→next
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ