小説部屋

□満月の夜
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その村では時折不思議なことが起こるんですって。

ある時、村で一番大きなお屋敷に村人たちが集まって何かのお祝いの宴を開いていたの。
広い宴会場では大人たちが、その隣の広間では子供たちが集まってそれは賑やかだったそうよ。
ふと、子供たちの様子を見に来た一人の大人が、不思議なことに気が付くの。

「お菓子でもあげようか。」と、その大人は人数分の…小さな村だから子供たちのことを皆把握していたのね…お菓子を持って広間に入った。
ちゃんと数えて持っていって一人にひとつずつあげたのに、何故かひとつ足りない。
「おかしいなぁ。」と思って子供たちの顔を見渡すのだけれど、どれも知っている顔ばかりで知らない子供は紛れていない。子供たちに聞いても皆友達だと答える。
けれど子供たちの数を数えると、一人多い。
知らない子供はいないのに、数だけがどうしても一人合わないの。

「なんだ、それ。お化けの話なのか?」
「お…俺を怖がらせようったって、そうはいかないぞ。」

チョッパーとウソップがびくびくしながら口を挟んだ。
いつの間にか互いに寄り添って聞いている。

「うふふ。これはそんな怖いお話ではないのよ。」

そう言うとロビンは続きを話し出した。

「変だなぁ…。」と思って宴会場に戻ってこの話をしてみると、一人の老人がこう話し出したそうよ。
『それはきっとこの家の守り神様だ。わしも小さい頃に婆様に聞いただけで見たことはねぇが、守り神様は普段は静かに家を見守っていて、時折そうやって人の前に現れるそうだ。今日は祝いの宴で楽しそうだからやって来たのだろう。なんとまぁ、めでたいことだ。』と。それを聞いた村人たちは安心して、宴はますます盛り上がったそうよ。
しばらくしてまた同じ村人が今度は神様の分のお菓子も持って、子供たちの部屋に行ったのだけど、今度はひとつ余ったそうよ。
さっきと誰が違うのだろう?と思って顔を見回しても、やはり皆知っている子どもだし、いなくなった子どもが誰なのかわからない。
子どもたちに聞いても誰も覚えていないの。




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