お宝部屋

□アヒルの子
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―――始―――



ある所で何羽ものアヒルが生まれました。

しかし、その中で1羽だけ灰色の子が生まれました。

自分の子に灰色のアヒルが生まれたと回りに知られたら、冷たい視線を浴びてしまう。
そう思った親は、その子を突き離してしまいました。

そんなことを知るはずもない生まれたての子は、親の後ろを必死についていこうといましすが、いつも無視されてしまいます。

えさもまともに与えてもらうことができずみんなの残りものを独りで食べる毎日。

「灰色で汚れた色をしたおまえは仲間じゃない」

そう言われては兄弟や子アヒルからいじめられていました。

誰も灰色のアヒルの子を相手にしてくれる者はいなかったのです。


何が悪いのか、なぜ自分の毛が灰色なのか・・・何を恨めばいいのかさえもわかりません。ただ、みんなと仲良くしたいだけなのに――


そんな日々が続く中、アヒル達の群れから離れて生活をしている1羽の年老いたアヒルに出会いました。

年老いたアヒルはのどが渇いていたようだったので、水をもってきあげました。

「ありがとう」

年老いたアヒルは言いました。初めて優しい言葉をかけられた灰色の子は、毎日彼の下へ行ってはいろんな話をしました。

年老いたアヒルもそんな彼を快く迎えいれてくれて、「ハイル」と自分のことを名づけ呼んでくれました。

「僕は毛がみんなと違って灰色だから、みんなから仲間はずれにされるんだ」

ある日ハイルは悲しそうに言いました。

「灰色だからなんだ。世界にはそんなやつらがたくさんいる。もしかしたら、今は灰色でも大人になったら毛が白くなるかもしれないぞ。わしは年寄りだからもう広い世界には出られないが、ハイルはまだ若い。いつか世界へ出てごらん。その時がくるまで、わしが一緒にいてやる。」

そう年老いたアヒルは励ましてくれたので、ハイルも今まで感じたことのない希望がわいてきました。





しかし、年老いたアヒルは病気で動けなくなってしまいました。

「おじいさん!!死なないで!僕を独りにしないで!」

「約束を守れなくてごめんな」

「そんなこと言わないでよ!僕もっとおじいさんとお話がしたいっ」

「こんな老いぼれを相手する者なんて誰もいなくて、ずっと独りだったんだ。そこへハイル、おまえがきてな。うれしかった。おまえはとても優しい子だ。必ず本当の仲間が現れる。そいつらに会いに行くんだ!ハイル。」

そう言うと、年老いたアヒルは死んでしまいました。

ハイルは何日も・・・何日も泣き続けました。
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