お宝部屋

□アヒルの子
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そしてまたひとりぼっちな日々が続きました。

もう誰も自分のことを「ハイル」と呼んでくれません。

自分を支えてくれる者もいません。

誰にも相手をされず、「仲間じゃない」とばかり言われ続け――



「本当の仲間に会いたい!」



ある日、耐え切れなくなったハイルはアヒルの群れからとうとう逃げ出しました。

独りで逃げ出し、行く当てもなく、さまよい続けました。

ただただ年老いたアヒルが最期に言った「本当の仲間」に会いたくて・・・世界を見てみたいとばかり思っていました。

何回日が昇り、落ちたのかわかりません。

何日も何日も夢中になって歩き続けました。

しかし、ついにハイルは倒れてしまいました。

もう一歩も動けません。

「このまま死ぬのかなぁ。死んだらおじいさんに会えるかなぁ。もう、疲れちゃった・・・。このまま死ぬのならちょうどいい。」

そう思ったハイルは深い深い眠りにつきました―――。



「おい、大丈夫か!?」

しばらくして、声をかけられハイルは目を覚ましました。

まだ生きていたのです。

目の前にはアヒルよりも真っ白で細長く大きな翼をもった鳥が、5羽ほどいました。

「なにしてるんだ?飛べないのか?」

「飛べない?」

「おまえも白鳥だろう?」

「白鳥?僕の毛は灰色だよ。白くない」

「自分の姿を見てごらん。近くに湖があるから案内するよ」

わけもわからないまま、白鳥達と近くの湖に行き、自分の姿を見てみると、なんと彼らと同じように白く美しい羽をもつ白鳥になっていました。

ハイルはしばらく呆然としていました。

「名前は?」

「・・・・ハイル。」

「ハイル!おれ達と一緒に世界を見てみないか?」

「でも、飛んだことないし僕はアヒルとして育ったんだ。そんなこと――」

「心配するな!おれ達は仲間だ!」

「仲間・・・・・?」

初めてそう言われたハイル。

目から涙があふれて止まりません。

やっとそう言ってくれる仲間に出会うことができたのです。

「うん」

ハイルは翼を大きく広げて、羽ばたかせました。

すると、まるで体が飛び方を知っているかのように空高く舞い上がりました。

こうして仲間ができた白鳥のハイルは大空を飛び回り、仲間とともに世界を見てまわりました。


―――終―――
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