夢物


□閉じこめた君
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「あれ?」


放課後の教室。


忘れ物を取りに来たら、
誰かが机に伏せて寝ていた。


まったく、誰?
こんな時間まで…



でもあの席って、確か……



近づいて顔を覗くと
やっぱり野々原君だった。


気持ち良さそうに寝ちゃって。


隣の席の椅子を引き、腰をかけた。


ふふ、
可愛い寝顔だな…



ふと、野々原君の顔の脇にデジカメがあるのに気付いた。




そういえば、
カメラ好きって言ってたっけ…



少し罪悪感がよぎったものの、
そっとカメラに手を伸ばした。



あ、これ今CMしてるやつだ。

欲しかったのよね〜


持ち上げた瞬間、
ピッという電子音と共に、画面に光が射した。



わっ!電源入っちゃった。
使い方、分かんないんだけどなぁ…


どうやら
撮った画像の再生らしい…


とりあえず
適当にボタンを押してみた。



「…わぁ…」



そこに映し出されていたもの…


空の風景
公園の風景
コロンちゃんの写真
姫川君達との写真
校舎




…様々な物が映し出されていた。


その全てが本当に、綺麗だった。





前に1枚、中庭の写真を見せてもらったけど
野々原君って、カメラセンスあるのよね。



次々に変わる
その写真に心、うたれていった…





「…っ!!」


その中の1枚で、手が止まった。




今までの風景写真や、集合写真とは違う。



1つだけの被写体。





「……あた、し?」





いつ撮られただろう…

そこには笑顔のあたしがいた。





なんで?
いつの間に??



次も、
そのまた次も…


そこにはあたしが、映し出されていた。



準備室、教室、廊下、階段…


様々な場所にいるあたしの写真。



だけど…
そこに映っているのは自分なのに、
自分じゃない感じがする。



他人からは、こんな風に見えるのかな…




少し恥ずかしかった。

でも、なんで野々原君が?





「……………まさか、ね。」



頭をよぎった理由。

それは、自分に一番都合のいい理由…


一番、あってはならない理由。



「…ん、」

「!」



野々原君の寝息に
現実に引き戻された。



起きた…??



あたしはデジカメをそっと、元あった場所に戻した。




……いや…



再び手に取り
カメラを構えた。
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