夢物


□スイッチON
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「失礼しまーす…」

昼休み
僕は職員室に呼び出された。


呼び出しの相手?
もちろん僕の可愛い先生…
じゃなく、数学の響先生。


今日の1限の数学を遅刻したあげく、ノートの提出を忘れてしまった。
と、いうわけ。


「昼休みまでに持ってきなさい。」

って、
睨まれちゃったんだよね…

はぁ。
ついてないなぁー

なんとか小早川君にノート写させて貰ったけど、僕あの先生苦手なんだよね…



なんか、冷たいっていうか。

壁を感じる、っていうか。



…あれ?
響先生いない、よね?

響先生の机は空っぽで、
肝心の先生は職員室を見渡すも、どこにもいなかった。



人を呼びつけておいて、自分は不在?!

ひょっとして忘れてる??


一生懸命
ノート、写したのに〜…


せっかくだし、ノートを机の上に提出して行こっと。


職員室に入ろうと踏み込んだ瞬間、急に棚の陰から誰かが飛び出してきた。



「きゃっ!」

「うわっ!
…あれ?先生!」

「あら、野々原君…
ごめんなさい、大丈夫だった?」

「…うん。大丈夫…」


ラッキー!
休み時間にまで、先生に会えるなんて!

今日の授業は英語ないし、HRしか先生に会えないんだよね。


「どうしたの?
昼休みに職員室なんかに…」

「響先生にノート出すように言われて、来たんだけど…」

「そうなの、あら?
いらっしゃらないわね…
どこに行ったのかしら?」


先生は響先生の机に目線を送り、言った。



僕先生のこの角度、好きなんだよね〜

ちょっと上から見下ろす、先生の後ろ姿。




「あ。」

「!?」


くるりと視線を戻され、びっくりした。

見つめてたの、バレたかと思った!


「野々原君、また今日遅刻して!
響先生も言ってらしたわよ!
野々原の遅刻癖、どうにかしてくださいって…」


ちょっと膨れた顔が、可愛いんだけど
先生の口から他の男の名前、聞きたくないなぁ…


「ごめんごめん。
昨日遅くまでゲームしてたら、朝起きれなくて…」

「あ、ひょっとして…
先週発売した、あのゲーム!?」

「そう!」

「あたし、もう攻略したわよ!」

「本当に〜?
僕、今お城でつまってるんだー」

「あぁ!あれはね〜…
って、誤魔化さないの!」



誤魔化してないよ…

ってか、先生が乗ってきたんじゃん!



ちょっと赤くなった先生に、僕は笑いながら謝った。



本当に、可愛いよねぇー



キーンコーン…


あ、昼休み終わっちゃった。

先生と話してると、あっという間だ!



「予鈴ね。
ごめんなさい野々原君、長く引き留めちゃって…」

「ううん。
先生と楽しくお喋り出来たし!
今度、ゆっくりゲームの攻略教えてね!」


僕は急いでノートを置きに行こうと、1歩踏み出した。


「あ、待って野々原君!」

「ん?…!!!!」


先生の声に振り返った瞬間、先生の手が僕に伸びる。


「ネクタイ、曲がってるわよ。」


そう言って先生は笑いながら、僕のネクタイを直してくれた。



「はい、出来上がり。
じゃあまたHRでね!
明日は絶対、遅刻しちゃダメよ!」



先生は僕のネクタイを直し、笑顔で職員室を出ていった。


残された僕は…




突然の出来事に、呼吸をするの忘れたみたい…
なんか息苦しい?



ネクタイがきついのかな…?



しばらく、その場から動けなかった。



少し首筋に当たった、先生の細い手の温もりを感じて。




→enD.

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