あるところに高い位置でブロンドをくくったお絵描きが大好きな少女がいました。少女はある日森へ一人で入ってしまいその森の中で襲われたところをある少年に助けて貰いました。それからというもの、少女はその少年から目を離せなくなってしまいました。一目惚れでした。彼女は自分を助けてくれた少年、爽やかに微笑んでくれた少年、燃えるような赤い瞳を持った少年に恋をしてしまったのです。

 燃える瞳に恋をした少女はそれこそ燃えるような恋をしました。初めは少年を想い胸にくくりつけ淡い気持ちを寄せて眠りに就いていましたが、それは夜な夜な違う儀式と呼ぶに相応しい物へと変化していきました。
ブロンドをさらさらと揺らし手をせっせと動かして記憶に残る少年を描き出しました。しかし少女はお世話にも絵が上手とは呼べない様な絵の腕でしたので、それはもう薄れ行く記憶の所為か少女の絵の腕の所為か、しっかりと少年を描き留めることはできませんでした。

 しかし少女はそのような些細なことは気に留めませんでした。毎日毎日毎日少年の絵を描き、その描いた絵にキスを落として寝ることで夢の中で少年に会えたからです。少女は少年に会うために、それこそ毎日毎日毎日これを続けました。少女はとてももうそれは狂わしい程に少年が大好きでした愛しておりました故、少年の絵を描いてはうっとりとした視線でそれを射止めていたのです。

 ある日夢の中で少女は湖で溺れていました。嗚呼夢の中で死んでしまうのか、そう意識を消しかけたその時です。光を浴びて艶やかに光る立った個性的な黒髪、しなやかな肢体に美しく着いた筋肉、何より一番見たかったその爽やかな表情を作り出す顔に二つほど着いた透き通るような赤色が少女の溺れている湖に飛び込んできたのです。そのまま綺麗なフォームを描き少女が溺れている場所まで泳いできてくれた少年は少女を助ける様に抱き抱えました。少女はその時少年に二度目の恋をしたのです。

「レッドさん、今日は僕キャタピーを捕まえたんですよ。凄く可愛いんです、特に…ふふ、レッドさんの瞳の鮮やかさには叶いませんが綺麗な赤身を帯びたピンク色の触覚と大きな瞳が凄く魅力的なんですよ。あは、レッドさん聞いてますか?見たいなら今見せてあげますよレッドさん、レッドさんレッドさん」

 少女は今日も自分で描いた少年に語り掛けていました。絵になった少年の頬を愛しそうに指先でなぞるように撫で、少年の赤に優しく微笑めば唇を吊り上げたまま微笑みと同じ優しさでキスを落としました。
さて、少女は今から湖へ向かうつもりです。理由を聞かれても少女はそれを誰にも教えることはありませんでした。何故かと言うと直感か常識かその理由を告げれば明らかに湖へと向かう足を止められると分かっていたからです。

「レッドさん、助けに来て下さいね」

 少女は、湖へ向かって歩きます。



(080728.黄→赤/それだからライアビリティーというやつは)


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