「使えない奴」

 少年はそれはそ
れはまた冷酷かつ
残忍な性格をして
いたので直ぐに切
り捨て割り切れる
、そんな行為はい
とも簡単に出来て
しまったのです。
幼いながらに出来
上がってしまった
その恐ろしいほど
に膨大な黒い渦は
ブラックホールと
でも呼びましょう
かええそうですえ
え、彼はブラック
ホールの中心に優
に立てるあのちっ
ぽけな宇宙を睨ん
だ男なのでした如
何にも。

 彼には兄が一人
居てその兄はとい
うと見事なまでに
完璧な人間、そう
それは容姿力腕前
性格全てが揃って
いる其れこそあの
自ら光を発して輝
く星すら恥じらう
くらいの完璧の持
ち主でしたそんな
兄を彼は誇りに思
っておりました。
彼は自分の兄が大
好きでまた、彼の
兄も彼のことが大
好きでありました
ので二人はそれは
それはとても仲の
良い兄弟として世
間で有名になって
いたのです。

 しかし彼の兄は
ある日旅立ちまし
た彼を置いて。置
いていかれた彼は
必死に夜な夜な兄
を求め探します、
何処へ行ってしま
ったのお兄ちゃん
、と。彼はまたど
うしようも無いほ
どに兄が大好きで
大好きで堪らなく
愛おしい、そうで
したのでそんな兄
が消えてしまった
ことそれは。彼の
心臓にぽかりと穴
を空けそこにブラ
ックホールと呼ば
れるなんとも忌々
しい深い深い闇の
穴を作り上げるの
に時間は掛かりま
せんでした。

 彼は兄を求める
ために自分も旅に
出ることに決めま
した、しかし肝心
なことに彼はどち
らかと言うと幼少
期から兄と共に父
に育て上げられた
ため強い腕を持っ
てはいましたがそ
の腕は一際目立つ
腕、と呼ぶものに
は程遠いものでし
た。それでしたの
で彼は一日に何時
間も何十時間も特
訓をし重ねました
。全ては兄のため
に、自分のために


 やがて誰が見て
も目を見張るよう
なおぞましい程の
力を身につけた彼
は兄と入れ違いに
旅に出ることにな
りました。その入
れ違いと言ったら
なんと素っ気ない
こと、あんなにも
待ち恋焦がれてい
たはずの兄に出会
った彼だというの
に最早既に彼には
兄の姿は目に入っ
ていませんでした
。彼が見詰めるも
のはただ一点、兄
の、上。

 旅に出た彼は凄
まじい出会いをす
ることになります
それは一人の少年
、力では己が勝っ
ているというのに
彼の何と輝かしい
こと!彼は自分が
ブラックホールの
中心に立っている
ことを思い知らさ
れます、致し方あ
るまいこれは彼自
身の問題であるの
ですから。

 あの輝かしい少
年を思って今日も
彼は呟きます。


「本当に、使えな
い」

 何がどう使えな
い彼の仲間たちな
のかそれとも兄の
あの笑顔なのか光
を持った少年なの
か闇の中ただひと
りぽつんと佇んだ
彼が、なのか。生
憎分かる者は彼し
か御座いません、
彼の考えはそれこ
そ暗い闇の渦の底
なので御座います
。闇に潰され失明
したその心臓に埋
まった三つ目の瞳
は、光を映すこと
は生涯一生ありま
せんでしたとさ。



(080804.シンサト
/目が見えれば良
いと思った)


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