「なぁイギリス、」
「何だよ」
「俺たちどうして巡り会えたと思う?」

 そんなアメリカの馬鹿みたいな問いにんなもん世界があるからだろとだけ簡潔に素っ気なく答える。アメリカはそんな答えでも満足そうに何時も浮かべている笑顔のままで頷いた。だから何だっていうんだ、そう問い掛けようとした俺の言葉は続く相手の言葉によって阻止される。

「じゃあ、」
「…何だよ」
「俺がイギリスの植民地にされたのは、何でだと思う?」

 まさにそれは何故薔薇が綺麗に咲くのか、何故グリニッジに経度0度が通るのか、そんな風に問われてしまうからどう答えて良いのか分からなくてどう答えたらこの目の前の男は悲しみの色を無くすのかやら顔を歪めずにすむ、それを考えるがためだけに世界は廻る廻る。それは、世界が出来たから。そうやって小さく呟いて見せればそう、アースデーが俺たちを生み作り上げたのだ世界の誕生日。世界の誕生日に俺たちは生まれた、けれども生まれた俺たちは俺たちでは無かった。そこから作り上げられるようにじっくりとじっくりと何年何十年何百年何千年の歳月を経て今の俺たちが出来上がったのだろう、少なくとも俺にはその誕生日などは無いが。

「じゃあ、俺とイギリスがこうして出会えたのも世界が出来たからだね!」
「何今更そんなこと言ってるんだよ」

 にこにこと笑いながらそう告げるアメリカの露になっている額を軽く人差し指で突けば痛いじゃないかと大して痛くも無いくせにそう告げて来るので嫌になる。にこにこと笑っていると思いきや突いたままの体制であった俺の腕を引っ張り自分の方へ引き寄せるアメリカにぞっとした、のは何故だか分からない。何するんだよと言う前にアメリカが俺の耳元で囁く、そちらの行動の方が早かったらしい。

「ね、アーサー」

 思わず肩が跳ねた、まさかいきなり自分の名前が告げられるとは思ってもいなかった俺は。そのまま引き継ぐかの様にどの感情を表しているのか分からないような声質で言葉を告ぐアメリカ否アルフレッド、その表情は生憎見えることは無い。

「あのさ、ずっとアーサーに言いたかったんだけど」
「…何だよ」
「…フランシスと二人っきりで会議、もう開かないでよ?」
「!」

 それだけ淡々と告げれば俺を離し、今までの行為が無かったかのように笑顔を浮かべて「だって俺は世界のヒーローなんだからね、俺も混ぜてくれないと駄目だよ!」と何時もの様にあいつは笑った。
その表情は余りにも自然なもの過ぎて俺は、もう、どうしたいんだ。わけのわからないこの感情が渦巻き陥れる、こんな思いを俺にさせているのは、フランシスでも無くアルフレッドでも無くきっと俺たちを生み出した世界なのだろう。



(080731.米英/アースデーを踏みにじる)


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