「あー浜田おはよぉ…」
「来て早々大あくびかよー」


だって聞いてよ!
そう続けたコイツはクラスで1番仲が良い女子。
とは言ってもアネゴ肌なヤツで考え方とかが似ているから仲が良いのであって、ハッキリ言って彼女にしたいとかそういうのではない。


「うちのチビ達が昨日散々キャラ弁がどうとか言っておいてさ、仲良く風邪引いてんの」
「作ったんだキャラ弁!」
「そうよ?でも朝早く起きて作ったらおかゆじゃないとダメ状態とかマジでアホ」


コイツがアネゴ肌なのは多分年の離れた双子の弟達がいるからだ。
オレの机に腰掛けてグチグチ続けるのを聞きながら、アホとか言っててもチビ達にせがまれてキャラ弁作っちゃうコイツはチビ達が好きなんだろうなぁ、そんなコトを思いながらいつもと変わらない朝を過ごしていればガラガラと勢い良く教室のドアが開いた。


「おはよー」


ドアから入ってきた野球部メンバーに、首だけを向けて挨拶をすればパタパタと田島が1番に駆け寄って来る。
それからカバンを置いて三橋、席の近い泉が椅子をこっちに向けてから座って皆でHRが始まるまでしゃべったりするのがお決まりの日常。


「浜田と何しゃべってたんだ?」
「それがもう聞いてよ」


もう1度始まったチビ達の話はカバンをゴソゴソとやりながらだった。
そしてカバンからは小さい子用でおなじみ、アルミの楕円の可愛いお弁当箱。


「ってわけだから2人にあげる」
「マジでー!?」
「う、お…!」


泉がオレの分はとか言っている横で、三橋と田島はその弁当を早速食べようとカパリと開く。
三橋のにはひよこ、田島のには犬の絵が入ったご飯が広がっていて途端に2人の目がキラキラと輝く。


「すっげー!食うのもったいない!」
「かわ いい!」


興奮気味に弁当にはしゃぐ2人を嬉しそうに笑って言葉を返すコイツは、さっきも言ったけどアネゴ肌なヤツ。
自分と似た考え方するから結構考えてるコトが分かるんだよな。


「やっぱりお前いいよなーゲンミツに!」
「はいはいありがと」
「マジでいいって!ちょー好き!」


でもってオレはコイツと違って男なので、男心というヤツも分かってしまったりする。


「ほんとに田島ってうちのチビ達と変わんなくて弟みたい」


いや、分かるよお前が田島とか三橋可愛がってるのがチビ達の延長みたいな気分だってコト。
でも毎日のようにあえてお前が喜ぶような形で好きを連発する田島に向かってその台詞は正直ないわー…





その言が取り






突然視界がぐるりと天井を向くと、さっきまで座ってた机が私の背中にあった。
ギ、静まり返る教室に机の軋む音が響いて固く瞑っていた目をそっと開けば目の前には田島。


「そういうんじゃねーの、オレのお前に言ってるスキ、は」


真っ直ぐな視線に射抜かれて、身体が固まる。
いつもの可愛い田島はそこにはいなくて、押倒されて見上げる田島は何だかとっても大きく、男らしく見えて顔が熱くなった。


「わかれよな」


ギギ、真っ直ぐな視線が近付いて来て、鼻先が触れ合えば言葉も出せずにコクコクと頷いた。
そこでチャイムが聞こえると田島はいつもの顔に戻って、先生来るぞーとかって言って私から離れてく。


「とりあえず席戻れ」


へらり、机の上に寝転がったままの私に浜田が笑いかけた。
真っ赤である顔を両手で隠してコクリと頷いてはみたんだけれどね。


「ゴメン、腰抜けて動けない…」


ねえ浜田、私これから田島のコトどういう目で見ればいいんだろう、後で相談させて下さい。
(でもその前にお願い、先生来る前に起こして)





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相互記念。たえさんに捧げます!
≪戻(09/10/28*瑠羽拝)
一命/大切な,唯一のという気持ちで使う(デイリーコンサイス国語辞典より抜粋)

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