OhMyブック

□名前変換無
4ページ/14ページ


突然の雨で部活は中止。
激しく降り注ぐその雨に、田島達9組野球部の3人は下駄箱で足止めを食らっていた。

「お、阿部、お前も傘ないの?」
「天気予報、降るなんて言ってなかったからな」

そんな3人の中に阿部も混じる。
ザーという大きな音は一体いつ止むのだろうか…
暇だからと携帯を弄ったり、ぼーっと雨空を見上げたりしているとどこからともなく花井の少し荒いだ声が聞こえた。
ん?と田島と泉が顔を見合わせると声のする方へと進んでみた。

「だ、だって雨、酷いから…」

そこには花井より大分背の小さい少女が、唇を噛み締めて花井を見上げていた。

「あー!花井が女の子泣かしてる!」
「っ!?」

田島がそう声を上げると驚いた花井がぐるりとこちらを向いた。
暇を持て余していた足止めを食らっている全員でぞろぞろとそちらに歩いて行く。

「うるせー!泣かしてねーよ!」
「そっか?涙目だぜ?」

しれっと泉に返事をされれば花井はうっと言葉を詰まらせてから、ゴシゴシと袖で少女の目元を擦る。
阿部はそんな花井の腕を掴めば、ポケットからハンカチを取り出した。
無愛想だがあれこれ気のつく阿部は、この対応もあくまで三橋を世話する延長上なのであるが花井は衝撃の表情を浮かべている。

「ありがとう、えっと…もしかして阿部君?」

は?と今度衝撃の表情を浮かべたのは阿部だ。
突然目の前の少女が首を傾げて名前を呼んだのだから。

「そ、そうだけど…」
「梓から話聞いた通りだね」
「ちょ、おま…」
「皆も雨宿り?」

ふふ、と背後に花が見えそうに柔らかな笑みを浮かべた少女に一同は瞳を奪われながらコクコクと頷く。

「それじゃぁ少し待ってて」

傘を差して雨の中を小走りに少女が行ってしまうと、花井が唸りながら両手で顔を覆ってしゃがみこんだ。
その耳は真っ赤で田島は彼女かと花井を茶化す。

「彼女じゃねーよ…」
「あ、く…車 だ」
「オレの姉ちゃん」

皆送ってってあげるよと下駄箱前につけた車の運転席から笑みを浮かべた少女…いや、年上だった彼女に驚愕の表情を浮かべて一同はぐるりと花井に顔を向けた。

「言っとくけど惚れんなよ…」
「いや、もう阿部が手遅れかもよ」

泉の言葉に花井がガバリと立ち上がって少し頬の赤い阿部に掴みかかる。
田島はサンキューとか言いながら三橋の手を引いて我先にと車の中へと駆け込んでいく。

「梓ってば」
「あーもー!何で迎えになんて来たんだよ!」
「っ…だって…!」

うるっとまた涙目になったのに驚いたのと、ちゃっかり助手席側の扉に手を伸ばした泉に、花井は阿部から手を離すと大慌てで車に駆け寄ったのだった。



(花井姉・ハタチ前後のおチビ。強気な女性陣の中では花井に近い弱気腰。双子の妹達からは大分好かれております。/花井にもな)


≪Back
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ