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「栄口、今日は何だかご機嫌だね」

へらり、そうやって水谷に笑みを向けられ栄口はえと自分の顔に手を当てた。
それからそうかなとにやけにも似た笑みを浮かべると、珍しいその表情に水谷は目を瞬かせる。
やり取りを見ていた巣山は栄口の頭をぽふと叩きながら口を開く。

「こいつ、今日久々に姉ちゃんが帰ってくんだってさ」
「え!栄口の姉ちゃんって…」

実はいつも一緒に家にいる姉以外に、もう一人年の離れた姉がいると言う。

「えーっどんな人どんな人!?」
「おもしろい…人かな?」
「おもしろいの?」

皆で首を横に傾げてみると、栄口は何か思い出し笑いのようにくすくすと楽しそうに笑う。
例えばどんな事とか?と話に花が咲きかけたその時…

「ゆーとー!」

突然そんな声が聞こえた。
驚いてぐるりと振り返ればそこには両手を広げて駆けてくる女の姿。

「ねっ…姉…」

ムギュウ!
栄口の言葉は最後まで紡がれる事なく、女の胸に消えていった。

「会いたかった会いたかった会いたかったぁっ!あーちょっと背高くなったかな?うん、これじゃそのうちヒール履いてても勇人に追い越されちゃうかな?何か悲しいけど成長してるのが分かるから嬉しくもあるのよこんちくしょー!」

まるで弾丸トークのようなそれにそれを見ていた一同は唖然。
だが彼女はそんな事をお構いなしに嬉しそうに抱き締めていた腕を伸ばすと、近くに見つけたその姿にまた笑って手を振りその口を開く。

「蚊帳君久しぶりだね!いつも勇人がお世話になってありがとうね!あ、お土産買ってきたから後で渡すからね!」
「か、蚊帳 くん?」
「…阿部隆也です」
「うん、キャッチャーのあべ太蚊帳君」

名前の切る部分可笑しいと水谷が笑い声を上げると、阿部はもう一度自分の名前をきちんと区切って念を押すように言う。

「いいのよ蚊帳君で。ほら、蚊帳ってそれを覆う一つの空間でしょ?なら野球の試合をコントロールしようとするキャッチャーっていうのはその空間を支配するんだから似てるでしょ」
「似て…ないっす…」
「じゃぁあべ太君で」
「そっちの方がもっと嫌です!」

じゃぁカヤ君のままでと言いくるめられて阿部は意気消沈している。
周りはその阿部を…と彼女に尊敬の眼差しにもにたそれを送っている。

「あぁっ大変!もっと皆に勇人の話とか聞きたかったんだけど家に帰らないとご飯食べる時間がなくなっちゃう!」
「え?」
「ごめんね勇人、私明日にはまたニューヨーク支社に戻らなきゃなの!」

だから早く帰って家族団欒するわよと腕を引っ張る。

「カヤ君お土産は明日勇人に貰ってね!それと今度頑張って日本支社に戻ってこれたらその時に皆にお土産買ってきてあげるからこれからも宜しくね〜!」

ぶんぶんと手を振って、そのまま栄口の手を握ると小走りにして行ってしまう。

「確かに面白い人だ」
「っつーか嵐?台風?」
「阿部お土産いーなー」
「っつーかニューヨークって?」
「……」

途端にわっと盛り上がり始める栄口を含め、その姉の話。
多分明日は皆に質問攻めにあうであろう栄口であった。



(栄口姉・下にいる3人の今後のためにと父親と共に仕事に大奮闘する多分実は栄口家の大黒柱。家族にはデレデレだが一歩仕事の顔になると別人でその腕を買われて現在NYにてバリバリ働いております/笑)


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