Dream

□*
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「紗弥」

『・・・・・・・』

「・・・紗弥、」

『・・・・・・・・』



弦一郎はきっと困ったように眉をひそめているんだろう

でもまだ振り向いてやんないんだから



元はと言えば、悪いのは弦一郎

部活が終わったくらいに弦一郎の家に行くからね、ってそう言ったのに

わかった、って、今日は早めに帰ろう、って言ってくれたのに

帰ってきたのはすごく遅かった

自主練をしていたんだろう


想定内だよ?このくらい、想定内だけどさ

弦一郎が部活後に自主練をしてくることくらい想定内だったけどさ




「紗弥、頼むからこっちを向いてくれないか・・・?」

『・・・・・・・・・』


せっかく、もっともっとゆっくりできると思ったのに


弦一郎の部屋にいるにもかかわらず、振り向かない私

きっと弦一郎のことだから、どうしていいかわかんないんだろう




『・・・馬鹿弦一郎』

「・・・すまない

 ・・・!?」




私は振り向いて弦一郎に抱き着く


『今日は・・ゆっくりお祝いしたかったんだよ』

「お祝い・・だと?」

『今日は・・弦一郎の誕生日じゃない』

「!」


ぴくり、と反応する弦一郎

きっと自分の誕生日を忘れていたんだろうけどさ

そんなことだろうと思ってたよ



『忘れてたんでしょう?』

「・・・・・・すまない」



私は弦一郎に抱き着くのをやめて、鞄からプレゼントを取り出して弦一郎に手渡した

随分前から用意していたプレゼント

以前弦一郎がほしいと言っていた、新しいリストバンド

立海のレギュラーはいつもパワーリストをつけてるから、つけてくれるかどうかはわからないけれど



『はい、

 ハッピーバースデー、弦一郎』


「む、あ、ありがとう」



しかし、弦一郎はそれを受け取ろうとせず、私を引き寄せて抱きしめた

ことり、と私の手から落ちる弦一郎へのプレゼント

私も弦一郎の背中に手をまわす



『・・・・ほんとに弦一郎ってテニス以外のことって鈍感だよね』

「・・・・・・・・・」

『でも、そんな弦一郎も好きだよ・・・?』

「っ・・・・・」



耳まで真っ赤になる弦一郎


その姿がなんだか愛おしくて、私からキスしてやった

すぐに離すつもりだったのにそれはかなわなくて、弦一郎によって深くて濃厚なキスになっていた

さっきの困惑した表情と雰囲気はどこへいったのやら

私は弦一郎のキスに酔いしれた


しばらくして唇を離す

繋がっていた銀の糸が名残惜しそうに切れた


「・・・・・・・・」


フッ、と笑って、ありがとう、と呟くや否や、弦一郎は私をベッドへと誘う




『こういうことに関してはこうなんだ?』

「それは相手が紗弥だからだ」


私の髪をすきながら耳元で呟く彼

ああ、くらくらする、



すべてがどうでもよくなるような
(そんな感覚)
(酔いしれていると、私の首筋に淡い痛みがはしった)



fin...



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