駄文庫(短編)
□恋のサマーセッション
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(…間近で見るのは初めてだけど、ひょろっこい上にホントに幼いなあ)
プログラミングが得意だとは聞いてたのでインドア派かと思うが、先ほどの様子を見ても頑強とは言い難いようだ。
自分もマイクロユニット製作が得意なのでインドア派といえばそうだが、彼ほど細くはないだろう。
投げ出された手足は自分と比べて短いというか、身長も含め全体的に小作りな感じで、静かに胸を上下させる姿はあまりにもひ弱そうで、すまない事をしたと再度思った。
(あー…髪、サラサラだな。目もでっかい…)
日も半分落ちて木の陰になった視界の中では真昼の太陽の下ほどはっきりとは見えないが、割と顔立ちが整っていることに気付いた。
鳶色の髪は真っ直ぐ流れるように滑り、所々はくせ毛なのかピンとはね、瞬きを繰り返す大きな瞳はアメジストに輝き、揺れる葉を映している。
顔も小さく、この辺りが幼い印象を際立たせているのかもしれない。
話すこともなく、伺うように盗み見ていたアスランだったが、ふとそのアメジストがこちらに向けられていて、そこに見慣れた自分の姿が映っていることに気付いて意識を起こす。
「あ」
「…僕の顔、何かついてる?」
未だ顔を僅かに上気させ覗きこむように尋ねるキラに、アスランは咄嗟に何も言葉らしいものが出ず、「いや!何も!」と簡潔に返した。
気付かぬうちにじっと見すぎていたのか「そう?」と不思議そうに首を傾げるので、さすがに事実をそのまま話すのもおかしいかと取り繕うように「さっきはありがとう」と投げかける。
「ありがとうって、何が?」
「イザークから助けてくれたんだろ?」
イザークは毎日車で送り迎えをして貰っているにも拘らず運動神経が鋭く足も速い。
あのまま走って逃げ切れたかもしれないが、万一を考えるとキラを隠れ蓑にした方が被害が少ないのは確かだろう。
「キラと帰る約束をしていた」だとか言っておけば、あのイザークだってそこまで煩くはつっかからないはず。
「学校祭のプログラムで俺がちょっと口出ししたら途端に切れてさ。
俺の提案に決まったら案の定、席を立つと同時にお咎めだ。
偶然キラに会えて良かったよ、助かった」