駄文庫(短編)
□恋のサマーセッション
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キラはアスランの問い掛けに答えようとごしごしと目をこすって歯を食いしばる。
搾り出すように発した声はまだ涙混じりで、アスランは覗き見るように伺い、耳を傾けた。
「男同…士なのに、好きとか言って…」
“ごめん”続いた言葉にアスランは一瞬面食らう。
(“男同士”?だから“ごめん”?)
言われて思い出すが目の前のキラは男、そして自分も男。
キラが謝った理由はどうやら”同性なのに恋愛感情を持ってごめんなさい“だと悟って初めて互いの性別をはっきりと自覚する。
考えもしなかったところから答えが出てきてアスランの明晰な思考回路は一時停止した。
(そーいやキラって男だもんな。こんなに細くて可愛い顔してるけど…)
我慢しているようだが感情の制御が効かないのか泣き止む様子のないキラをぼーっと眺めて率直な感想を頭の中で述べる。
(でもなんで“ごめん”なんだ?俺はむしろ―…)
「嬉しいけど」
一時停止した頭でポロリと口から出た言葉。
(別に言われて悪い気しないし…。あ、でも同じ男でもディアッカあたりに告られたら引くかもしれない)
そんなことは万に一もないだろうが)
そんなことを考えながらさまよわせていた視線をキラに戻すと、赤く腫れた瞳とバッチリ合う。
キラはぽかんと口を開け、けれど先ほどまでの涙を頬に残してアスランを驚いたように見ていた。
(え、俺今なんかまずいこと言ったか?)
とりあえずキラの涙は止まったようでほっと胸を撫で下ろす。
しかし涙だけでなくキラの頭もどこか止まってしまったのか、瞬きを繰り返し開いた口をそのままに微動だにしない。
(えーっと…告白してくれたってことは俺のことを好きなんだよな?だったら“嬉しい”って言うのは別に悪い言葉じゃないよな?)
固まってしまったキラの心中を慮ってアスランは次に発する言葉をあれこれと選び出す。
不思議といつも真っ先に浮かぶはずの「ごめん」はこの時、全く掠めもしなかった。
「俺、別に迷惑だなんて全然思っていないし、嬉しいって思うのも本当だ。
だから謝るのは止めてくれないか?
せっかく好意を持ってくれてるのに、謝られると何だか変な感じだし…」