駄文庫(短編)

□恋のサマーセッション
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異性であれ同性であれ好意を持たれるのは嫌なことではない。
「ごめん」と断っても尚引き下がらずにしつこく付き纏ってくる子もいたが、キラは自身の気持ちを押し付けようとしているわけでもないのだから。

「その、何で俺なんかを好きになってくれたのか分からないけど…
 キラの気持ちは嬉しいよ、ありがとう」

いつものフレーズを口にする。その後に来る言葉はいつも同じ。
けれど今回ばかりはそこまで口にしてアスランは一度止まる。

キラは黙って自分を見上げている。
その姿を見ていたら次に告げる言葉が考えるまでもなくスラスラと出てきた。

「…俺で良かったらお付き合いして下さい」

キラのことは好きだ。
今までともに過ごした時間は他のメンバーと比べて少ないけれど、彼を好ましく思っている。
けれど彼が自分に向けてくれるそれと全く同じかと問えばよく分からなくて、とりあえず彼のことをもっとよく知りたいと思ってそう口にした。

キラはアスランの言葉が理解できないのか、それとも先程の固まった状態から抜け出せないのかやはり呆然としたままだ。
ふとアスランは先程重ねたキラの手をもう片方の手で取り、握手する。

(…予想通り小さい手だなあ)

まずはご挨拶と思ってぎゅっと握って軽く振った。
するとキラは漸くどこかに飛ばしていた意識が戻ってきたのか、繋がれた手と照れたように微笑んで自分を見るアスランを交互にものすごいスピードで見比べ、幼い顔を真っ赤に染め上げた。
開けたままだった口を今度はパクパクと開閉させて、必死に状況を理解しようと目を泳がせつつも結局は改めてアスランに問うこととなった。

「あ、あの…?」

泣き止んだと思ったのにまたも目を潤ませ恐る恐る問いかけてくるキラに、泣かれては困るのでアスランは出来るだけ柔らかい声色で答えようと努める。

「キラのことを恋愛感情で好きかどうかは自分でもよく分からないから、そんな俺と付き合うのは苦痛かもしれない。
 俺、考えてもみればキラのことよく知らないし、でももっと知りたいって思うから。
 キラが嫌じゃなかったらだけど…」



“付き合ってくれますか?”





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