駄文庫(短編)

□ヒミツなふたり
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「…嘘」

寮長から配られた新しい部屋割り表を手にし、自分の名を見つけたその下に並ぶ、有り得ない新同居人の名前を見つけてキラは固まった。

「じゃあ、移動は予定通り明日から。荷物まとめてないヤツはさっさとまとめておけよー!
 いくら新入生が入寮するのが来週とはいえ、こっちも予定があるんだ。問答無用で追い出すからな!」

「了解」だの「げー」だのと様々な声が飛び交う中、連絡事項を言い終えた寮長・ミゲルはひらひらと手を振って会議室を後にした。

「よおキラ!なに固まってんだお前」

用事を終えた生徒たちはあーだこーだと喚きながら、ぞろぞろと会議室から出てゆく。
人の波に揉まれながら、暗闇のどん底に突き落とされたかのように微動だにしないキラを見つけたディアッカは、ぽんと彼の肩を叩くが反応はない。

「なんだあ?漸く6人部屋から2人部屋にグレードアップするのに、何そんなに落ち込んでんの」

ケタケタと笑うディアッカを見上げ、対照的に暗い表情のキラはぼそぼそと口を開いた。

「グレードアップって…僕にとってはグレードダウンなんだけど…」
「はあ?おまえ、あのむさっくるしい6人部屋に戻りたいワケ?」
「そっちの方がまだいいよ…」

益々項垂れてゆくキラを見て、はて、キラと同部屋になるのは誰だったかと先ほど配られた部屋割り表を見る。

「キラ…は303号室?俺とイザークの2個隣じゃん。んで…」

辿ったその下に並ぶ名前。

「アスランじゃん。何、もしかしてあいつと一緒なのが嫌なわけ?」

ディアッカは顔を上げ、苦情やら何やらと寮生に囲まれ、これから一年、キラと同居人となるアスランを見やった。

「去年まで一緒の部屋にいたわけだし、別に支障なんてないだろ?」

1年生だった去年はディアッカとイザーク、ニコルにアスラン、トールとキラという6人組で一部屋だった。
皆穏やかな性格だったし(アスランとイザークはウマが合わないのか言い争うこともしばしばあったが)、喧嘩の絶えない部屋もあったことを考えると、何の問題もなく過ごしてきたと思う。
男6人とはいえ、カリカリしがちな進学校でもそれなりに打ち解けてやってきたもんだとディアッカは思っていたが。
そういえばアスランとキラは二人であまり話していることを見たことがないような気がして、ふむ、と首を傾げた。




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