短編小説

□最後まで言えなかった言葉
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戦場に身を投げ出して初めての夜。二人は狂うように互いを求めあった。
それが戦場の決まり事と言えばそれまでだが、銀時はその手で切り崩した敵によって生まれた熱を高杉に。高杉もまた同様にそれを銀時にぶつけてきた。
初めての夜に銀時は声が枯れるほど手荒に抱かれた。
だがそれはその時の一度きり。その後ズルズルと続いた関係では最初の荒っぽさは失せ、やけに優しく抱かれたのを記憶していた。これは高杉の優しさなのかと当初は何となく思っていた。
全身の血が肉を斬る事で沸騰し収まらない熱を宿した身体は今にも爆発しそうになるほどに気持ちを膨張させていた。
そんな自分を見ていた高杉もまた同じだったのに。なのに、彼は自分の状態など露ほども見せないまま銀時を優しく抱いた。自分の欲望のままではなく、銀時の熱を解放する事を優先してくれた。
そんな彼なりの優しさを感じながら毎夜高杉に抱かれその腕の中で一夜を過ごす銀時は知らず高杉に惹かれ好いていった。この男となら一緒に死んでもいい。そんな事を思った事もあった。
そんな感情も思考も全ては遠い昔の話である事を銀時は知っている。
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