短編小説

□おめでとう君、ありがとうお前
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「すいませーん、高杉くんいますかー?」

港に停泊する一槽の巨大な船の出入り口付近で、見慣れた銀髪頭の男が両手に袋を抱えながら船にいるであろうある男を呼んだ。
本来ならインターホンでも押して呼び出したい所だが、銃器類で武装した船にはおそらくインターホンなど不釣り合いであろうと容易に予測できるので、声を高くして目的の人物の名前を呼ぶしか、銀髪の男――銀時にはできなかった。
程なくして船の下層付近のハッチが開き、出てきた金髪の女性が驚いたように銀時を見るとすかさず腰のホルダーに収まっている愛用の銃を抜き銀時に向けた。

「誰かと思えば貴様は白夜叉!」
「よお。お前は確かー・・・シミ付きまた子だったか?」
「誰がシミ付きっスか!この白髪野郎!」

怒りを露に怒鳴る女性――また子は無意識に片手で臀部付近を押さえながら銃口を銀時の額に押し付けシリンダーを回した。
また子の鬼のような形相や銃口を突きつけられているにもかかわらず銀時の目は相変わらす死んだ魚のような目だ。
「そんな事よりさあ」と、己の失言に構わず銀時は抱えていた袋を抱え直し小首を傾げる。

「高杉、いねえの?」

他人からみたら何を考えてるのか分からない表情で自分の主である高杉の居場所を問う銀時にまた子は怪訝そうな顔でぶっきらぼうに答える。

「なんで敵の貴様に晋助様の事を言わなきゃならないっスか!」
「いや、別に今日はやり合おうって来たわけじゃねえよ?」
「?・・・じゃあ何の用っスか」

訝しむ表情を更に険しくさせ、また子は敵意の感じられない銀時の額から銃口を退いた。
銀時は「あれ?お前知らないの?」と、意外そうに目を丸くしてからニカッと白い歯を覗かせながら笑って見せた。

「今日はアイツにサプライズをしようと思ってな」
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