過去小説置き場
□今は少しでも君に安らぎを…
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雨音がうるさい…
ひどく耳障りで、
あの時を彷彿とさせる
――ピリリリ…
時刻は深夜をまわる頃。
夕方から降り続く雨は今もなおやむ気配はなく、その激しい雨音のせいで土方は傍らで鳴り続けるケータイの着信音に僅かに気付くのが遅れた。
幸いにも音が消える前にケータイの通話ボタンを押し、耳元へと持っていく。
「もしもし?」
ザーザーと鳴り続ける雨音で聞こえにくいであろうと思い、少しばかり大きめな声で電話越しの主に声を掛ける。
『……………』
それでも相手からは何の返答もなく、僅かばかりの沈黙が流れる。
それに土方はくわえていた煙草を灰皿へと押し付け、電話越しの相手に呼びかける。
「……もしかして万事屋か?」
土方の問いに相手……銀時が電話越しでゴクリと息をのむのが分かった。
「なんだ、どうかしたのか?」
呆れた言いようでもなく、だからと言って優しく言うわけでもなく、いつもと変わらない口調で再度問い直す。
それに電話越しから小さな声で何か呟くような声が聞こえたが、激しい雨音で上手く聞き取れない。
『お前さ……、今……』
ようやく聞き取れた声はいつもの気怠けを帯びた声ではなく、どこか怯えたような震えを感じる声だと土方は思った。
『今……、ひょっとしたら忙しかったり……する?』
「まぁ、な。色々書類整理とかあったりしてそれなりに…」
土方の答えに一瞬息を飲む銀時だが、次の瞬間にはいつもの気怠けな声色へと変わっていた。
『だ、だよなー!やっぱりお前ら公務員は俺達と違って夜中も忙しいよなー!本当ご苦労さん!』
「おい…」
突然の銀時の豹変ぶりに、土方が訝しげに声を掛けるが、銀時はそのまま話を進めていく。
『いや、本当忙しいところ悪かったね〜。
んじゃ、仕事頑張れよ』
――ブツッ
そう言い残し、ツーツーという音を残して電話は切れた。
「アイツ……」
切れた後も土方は黙って自分の持つケータイを見つめ続けた。