長編小説
□白き華は朱に染まる 〜エピローグ〜
1ページ/3ページ
一年後
あの時と同じく、雲ひとつない快晴な青空。
爛漫と咲き誇る桜の下で、銀時はお猪口につがれた酒を盛大に飲み干す。
「ぷはっ!やっぱりタマのついでくれた酒はうめーな!どこぞの怪物がついだのより何倍も上手いぜ」
大仰に言い放つ銀時にタマはウィーンウィーンと機械音を鳴らしながら首を振った。
「そんな大層なことではありません、銀時さま」
「おいテメエ!怪物ってのはあたし等のことじゃないだろうね!!」
「ソウデスヨ!オ登勢サンダケナラトモカク、私ハ違イマスヨ!」
「両方だ、この化け物共。一回鏡みて出直してこいや」
銀時はさらりと二人の抗議の声を切り捨てる。
「キーーー!!!まったく本当にムカつく野郎だね!!タマ、アンタもこのバカに何か言っておあげよ!」
「残念ながら、二人の容姿では銀時さまのおっしゃった通りかと」
「マ!!ナンテ失礼ナポンコツナンダロウネ!」
「タマ……アンタも言うようになったね」
「まあまあ、折角の花見なんですしここは冷静にいきましょう……ね!?」
四人の会話に新八がおずおずとした態度で割って入るが、グイッと襟首を掴まれ後ろに引き倒される。
「新ちゃん、あっちのことはいいから早く私の作った卵焼きを食べなさい。さっきから全然食べてないじゃないの」
目の下の影を濃くしながら、お妙は新八の前に暗黒物質(またの名をダークマター)と化した黒い物体を差し出す。
それに冷や汗をダラダラに流す新八。
「いや、あの……僕もうお腹いっぱいかなーなんて……むが!!」
僅かに上ずった声で断ろうとする新八の口の中に、無理矢理暗黒物質が……いや、炭と化した卵焼きが押し込められる。
「いいから男は黙って食えや!!!」
「むぐむぐ、新八も災難アルな」
スローモーションで涙を流しながら地に倒れる新八。
それを神楽は巨大なおにぎりを食べながら冷ややかな目を送る。
それらを見渡してから、銀時は徐に立ち上がり歩き出した。
「銀時さま?どちらに向かわれるのですか?」
「んー?ちょっとな」
そう言い残し、銀時は酒瓶を片手に皆から離れた。