長編小説

□白き華は朱に染まる 〜白夜叉〜
2ページ/17ページ






時は数日前に遡る。



















「久しぶりじゃねぇか、銀時ィ…」


時刻は丑三つ時。

月の綺麗な夜、窓辺に腰掛け煙管を吹かす高杉の元に二人の訪問者が訪れた。
一人は漆黒の衣に身を包み、まるで闇と同化するかのように部屋の隅にひっそりと佇む男。
ただ一つ、その闇の中に一点の銀色を煌めかせて。

そしてもう一人は先程の男とは正反対に、全身を真っ白な着流しで身を包んでいる。ただ、窓辺から差し込む月光を受けキラキラと輝く銀色だけは先程の男と同じ。
しかしその真っ白な姿を男……銀時は真っ赤に染め上げ目の前の片目の男の名を呼ぶ。



「高杉……」

「また真っ赤に染まりやがって……、
本当に綺麗だ、銀時ィ」


そう呟きニヤリと口元を歪める高杉に徐に銀時が近づく。

そして高杉と視線を合わせるようにしゃがみ込むと、そっと包帯の巻かれた左目に触れる。



「…どうしたんだよ、その目」


心配げに聞いてくる銀時にしばしの沈黙の後、フッと笑い己に触れるその手を取り、



「大したことじゃねーよ」


と、答える。



「そんな事より銀時ィ、テメェだいぶ人を斬ったみたいだな」


高杉の笑いが含んだ言葉に銀時は俯く。



「高杉……俺は……」

「銀時」


銀時が俯きながら言葉を紡ごうとした時、高杉がそれを遮るように銀時の名を呼ぶ。
そして同時に掴んでいた手を自分の方に引き、銀時の耳元でそっと囁く。



「言っただろ?テメェはただ斬ればいい。
何も考えず、斬って斬って斬りまくればいい」


まるで暗示をかけるかのように、静かに囁き続ける高杉に銀時は俯いていた顔を上げる。



「……ああ、そうだったな…斬る、斬ればいいんだ…斬れば…」


まるで何かにとりつかれたかのようにそう呟き続ける銀時から視線を部屋の隅にいる男……蓮に向ける。



「銀時ィ、ちょっとばかり席を外してくれねぇか?
なんなら斬ってきてもいいんだぜ」


蓮に向けた視線を再び銀時に戻し言う高杉に、「…分かった」と小さく答え、部屋を出て行く銀時。
それを見送ってから持っていた煙管をふかす。
すると今まで沈黙を守ってきた蓮がゆっくりと高杉の元へ歩み寄る。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ