長編小説
□白き華は朱に染まる 〜終演〜
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真っ白に塗りたくられた壁に挟まれた廊下を、慌しく看護士達が疾走する。
そんな中、銀時は廊下の隅に備え付けてある長椅子に静かに座り込んでいた。
その横には新八が。
そしてさらにその横には土方と沖田が立っている。
銀時は両の手を握り、首を項垂れる形でただひたすら祈るような思いで待っていた。
彼の愛する者の目覚めを。
「神楽……」
俯く銀時の目の前には、赤々とランプに照らされて浮かび上がる『手術中』という文字。
銀時は握っていた両手を開くと、そっと己の手を覗き込む。
手には未だ残る人を斬った時の感触。
「……ッ」
銀時はそれを振り払うように両手で顔を覆った。
神楽を斬った瞬間から呼び起こされた記憶。
たくさんの罪のない人間を斬ったこと。
大切な者達の心を傷つけたこと。
そしてあまつさえ、その大切な者を手に掛けたこと。
どんなに言葉を並べても、償いきれない罪悪感に胸が押し潰されそうだ。
銀時は虚ろな瞳で目の前に聳え立つ手術室のドアを見遣る。
するとそれを待っていたかのように赤いランプが消失した。
スーッと静かに開かれた扉から初老の医者が額に汗を浮かばせながら出てきた。