長編小説

□白き華は朱に染まる 〜エピローグ〜
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――ザッ、ザッ



花弁の積もる地面を歩きながら、銀時はある場所へ向かっていた。

それはあの時見た枝垂桜。

銀時は「よっこらせ」と掛け声を出しながら、その木の根元に腰掛ける。

すると酒瓶とは別に持ってきていた二つのお猪口を地面に置くと、それぞれに酒をついだ。

銀時はその片方を持ちながら、木を仰ぎ見る。

普通の桜とは違う枝のしなった枝垂桜は、空いっぱいに咲き誇る桜に比べたらどこか質素で物足りない部分がある。

けれど……



「枝の曲がった桜ってのも質素で結構いいもんだな」

「……そうだね」

銀時の言葉に、木の裏側から聞こえた声が賛同した。

「んじゃ、とりあえず乾杯といきますか」

お猪口を持つ銀時の目の前に、木の裏側から聞こえた声の主が現れる。

すると、地面に置いてあったお猪口を片手に銀時に柔らかく微笑む。

「乾杯」



――カチンッ



枝垂桜の下、二つの銀色が暖かな笑みを零しながら杯を交わした。













【白き華は朱に染まる】完
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