+六道骸×雲雀恭弥+

□+ずっと、ずっと+
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「あけましておめでとうございます」

「……おめでとう」

 別に新年を祝う気持ちなんて少しもなかったけど、そんなこと言ったって仕方ない。
 雲雀は回転椅子に深く腰かけて、背もたれに体重をかけた。

「お正月なのに、なんで学校にいるんですか?」

 骸は何かこの部屋に理由があるのかと、応接室の中を見回した。
 並盛中学校は冬休みの学校閉鎖のため、校内に入ることは禁止されていた。それでも、学校閉鎖など、雲雀には関係のないことだった。入りたいときに、入る。
 並盛中学校は、雲雀のものだから。

「家にいるの飽きたんだよ」

「元旦からですか?」

 骸は苦笑しながら、君らしいですねと雲雀の隣に立って、机にもたれ掛かった。

「今日は扉から入ってくるんだね」

 見上げてくる雲雀の視線に、骸は口元をゆるめた。

「扉は出入りのためにあるんですよ?」

 なんとなく馬鹿にされているような気分になった雲雀は、首を傾けて目を細めた。

「だって、君いつも扉を使わないでしょ?」

 咎めるように雲雀は、ため息を漏らす。

「いつも、気づいたら部屋の中にいてさ。そう言えば、一度窓から入ってこようとして、つまづいて───」

「去年のことです、忘れてください」

 骸は雲雀の言葉を遮るように強い声を重ねた。
 わずかに赤らめた顔を背けて、不満げに目を閉じる。
 雲雀はクスクスと笑いながら、隠した顔を覗き込んだ。

「新しくなったからといって、すべてをなくすんじゃなくて。積み重ねていくんだよ」

「君に、……そんな事を言われると思いませんでした」

 開いた目を瞬きながら、長い睫に縁取られた蒼と紅がまじまじと雲雀のことを見ていた。
 別にそんな驚かれることを言った覚えはないけど、長い間じっと見られるのは落ち着かなかった。

「なにそれ」

 熱っぽくなった顔を、冷えた自分の手で冷ます。
 その手をやんわりと剥がすように、骸の手が雲雀の顔を包み込んだ。
 余計に、血が昇っていく。

「君がそんなにも、僕のことを忘れられないと思っていたなんて」

「そんなこと言ってないでしょ?」

 呆れた顔で勘違いを正すと、近づく骸はクフフと笑って誤魔化す。

「もちろん、思い出でなんて、終わらせませんよ」

「聞きなよ、人の話」

 目を細めて睨み付ける雲雀の目には、相変わらずふざけた微笑みが映る。
 唇が触れあうギリギリで、骸は囁く。
 吐息と声に震える唇が、すでに重なっていると錯覚するようだ。

「なんであれ、変わらないでしょう?」

「そうだね」

 納得している自分が、どうも釈然としないけど。
 口づけが落ちてきたから、すぐにどうでもよくなった。
 去年と同じ唇のはずなのに、違うと感じる。
 それは、いつもそうだ。
 髪に指を掻き入れるように、骸の首に腕を回した。
 骸の片膝が雲雀の座っている椅子に乗る。そのまま、雲雀に覆い被さっていく。
 触れ合っただけの唇が離れて、慈しむように指の腹が雲雀の頬を撫でた。

「今年もよろしくお願いします」

 なにがあっても、君の口づけは忘れられない。
 だけど、いつだって記憶に裏切られる。
 それが────

「今年だけじゃないよ」

 ────君に惹かれ続ける訳なんだ。
 雲雀は骸の頭を押さえつけるようにして、顔を再び近づける。
 ぎりぎりまで、目を閉じることはしない。

「ええ、わかってます」

 骸は微笑みを消して、雲雀を見つめる。

「これからも。そして、いつまでも」

 真剣な眼差しに、わかってるじゃないと釣り上げた唇は、余裕をなくした舌に割り開かれた。

fin... 

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