+ディーノ×雲雀恭弥+

□+エイプリルフールに真実+
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「僕はあなたのことが大っ嫌いだよ」




 ベッドから体を起こし、隣で寝ている男に向かってそういってやった。

 男は目を丸くして僕のことを見た。




「恭弥……いきなりどうしたんだよ?」




 男も上半身を起こした。

 男が困惑した表情で、首をかしげた。

 サラリと金色の髪が揺れる。




 このイタリア人の名前はディーノ。

 キャバッローネファミリーの10代目ボスである。

 僕の相手ができるぐらいには、力があるようだけど、部下がいなければ、草食動物よりも弱い。




 ディーノの腕が僕の顔に延びた。

 顎に長い指が添えられる。




「嫌いっていうくせに、嫌がらないんだな」




「嫌だよ?気安く触れないでよ」




 僕は自分からディーノに唇を近づけた。

 唇と唇が重ならないギリギリの距離で止めたのは、男の反応を見るため。

 言葉とは反対の行動にディーノは困惑の色を強くする。




「あなたにキスされるのだって、あなたとやるのだって、嫌いだよ」




 ディーノは曖昧な顔をした。




「じゃあ、なんで、昨日オレとしたんだよ?」




 ベッドの周りに散乱する衣類。

 僕たちは今、何も身につけずベッドの上にいる。




 顔にはださないけど、僕はとてつもなく腰が痛い。




「あなたが嫌いだからだよ」




 ディーノは不貞腐れた顔をした。

 大人なのに、そんな子供みたいな表情が似合うなんておかしな話だ。




「訳わかんねーぜ」




「ふーん」




 僕は軽く唇を重ねた。

 ディーノは驚いて瞬きをしたが、嫌がる素振りは見せない。




 唇を離し、挑むような目線を送る。




「なんなんだよ、お前は」




 あなたの方こそ、何やってるの?

 ほら、早く気づきなよ。

 僕が何をいってるのか。


 今日は特別な日なんだよ?




「あーあ、昨日はあんなに可愛かったのに、今日は嫌いときた。一日たっただけで、なにが────」




 ディーノはようやく気づいたようで、棚に置かれた自分の時計を見た。




「……4月…1日…そういうことか……」




 そうだよ。

 今日はエイプリルフール。

 僕が本当のことをいえる日。

 僕が素直になれる日。




 僕の言葉の意味を理解したディーノは顔を赤らめながら、へへっと笑った。




「お前、ホント素直じゃねーな」




「僕は素直だよ?」




「ああ、知ってるよ」




 ディーノは両手で僕の頬を挟んだ。

 自然と体は後ろへ倒れ、ベッドのスプリングが軋んだ音をたてた。




「オレはお前のことをよく知ってるよ」




 顔にディーノの金髪が落ちてくる。

 柔らかなそれは、少しくすぐったい。




「それ、嘘でしょ?」




「さーな」




 ディーノは無邪気に笑った。

 そして、僕の額に、瞼に、鼻先に口づけを落とした。


 僕はディーノの首に手を回す。

 ギュッとあちこちに跳ねる金髪を掴んだ。




「ディーノ、嫌いだよ?」




 ニヤリと笑いながら、ディーノは答えた。




「オレも恭弥が大っ嫌いだよ」




 そして、二人は笑いながら、唇を交わした。




end...

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