+ディーノ×雲雀恭弥+

□+ひざまくら+
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1.

 ガチャッ。



 ノブの回る音で目が覚めた。
 ぼーっとする頭に、じんじんと疼きが広がる。
 ソファーから体を起こし、扉の方を見ると、申し訳なさそうな表情を浮かべたディーノが近づいてくる。


 今日は、遅いんだね……。


「起こしちまったみてぇだな…」


「僕は葉が落ちる音でも目を覚ますんだよ」


 ふーん、と何か考える仕草をした後、ディーノの手が顔に伸びてきた。


「!」


 頬に触れたそれに気をとられていた。
 だから、だから対応が送れてしまう。


「それでも───」


 熱い吐息が顔にかかったと思えば、柔らかな唇が重なっていた。
 男が気に入っている甘い香水の香りが強まる。
 視線を動かすと、金の長い睫毛に縁取られた瞳が伏せられていた。


 なにやってるの?


 文句を言いたかったけど、文字通り口がふさがされているし、久しぶりに触れた唇の感触に満足している自分がいた。


 もういいや。


 諦めて息をつくと、面白そうに雲雀の顔を覗きこむディーノと目があった。


「───寝起きは弱いよな」


「僕が弱いって?」


 トンファーを取り出して首筋に押しつけようとしたけれど、手首を掴まれ動かせない。


「あー、乾燥してらー」


 ディーノの親指が、雲雀の唇をなぞる。

 反対の手に握ったトンファーで殴ってやろうと思ったけど、余りにも間抜けなその顔に興が削がれた。

 代わりに、雲雀はその指先に噛みついた。


「おい、こら、噛むなって」


「邪魔」


 ディーノの手を振り払い、ペロリと唇を舐めた。
 かさついている唇にピリリと痛みが走る。


「邪魔って……、あっ、舐めるなって」


 ディーノは手をどけ、ズボンのポケットから小さな筒を取り出した。


「せっかく柔らかい唇なんだから、手入れをすれよ」


 それって、誉められてるの?


 顎を持ち上げられ、リップクリームを塗られる。


「しないよ、そんなの」


 抵抗はしないでおく。
 唇が切れると痛いし。


「勿体ねぇな」


 軽く唇を開くと、上唇と下唇の間をリップクリームが滑った。
 ほんのりとメンタールがスッと鼻を抜けていく。


 それにしても、眠たい。
 寝ていたはずなのに、寝足りない。
 ソファーでは、十分な睡眠が取れないようだ。

 もう家に帰って寝た方がいいのかもしれない。
 でも、家に帰るには眠たすぎる。

 とりあえず、もう少し睡眠をとろう。
 だけど、首が酷く痛んで………。


 雲雀は塗り終わったリップクリームをしまうディーノを眺める。


 ちょうど、いい?



「ねえ、そっちの端に座って」


「えー、オレ、恭弥の隣に座りてぇよ」


「いいから座りなよ」


 苛立ちが滲んだ雲雀の言葉にディーノは渋々従った。
 ソファーのスプリングが軋む音。


「これでい───!?」


 ディーノは驚きに声を失った。



 もう、限界だよ。
 


 雲雀はディーノの膝に頭を乗せた。
 それは、世に言う膝枕。


 思った通り、高さとかちょうどいい。
 なんか暖かいし。
 固さは……まあ、我慢する。


「動いたら、咬み殺すから」


 ディーノを見上げて睨みつける。


「はっ、いってらー」


 ディーノの手が雲雀の頭を撫でた。
 それは、いつもの雲雀なら振り払うだろうけど、今はしない。

 規則的に動く手が、深い眠りに誘う。



「子守唄歌ってやろーか?」


「いらない……、静かにしててよ……」


「わーたよ」


 ディーノは目を細めて、愛しさを込めた口づけを雲雀の額に落とした。
 柔らかな金髪が、顔にかかり、頬をくすぐった。
 近づく甘い香水を胸一杯に吸い込む。


 雲雀はそっと瞳を閉じた。


「おやすみ…」


「ああ、おやすみ、恭弥」


 優しい声を聞きながら、落ちていくような感覚に体を預けていく。


 意識はすぐに闇に落ちた。


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