Celeste Blue(二次)

□鐘を鳴らして
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「・・・これ。」

呼び掛けに我に返ると、真剣な顔をした彼に手を取られた。
そっと取り出したのは、暗闇の中でほんの僅かな光を弾いて煌めいた青い指輪だった。

「これ、青い羽の!?」
「・・・そう、君がくれた・・・羽。」

ゆっくり確かめるようにはめられたそれは、ぴたりと薬指に納まった。
その光景に胸が熱くなる。

「・・・俺は・・・いろいろ人と・・・違う、から・・・その・・・普通の幸せ、とか・・・君にあげられないかも、しれない・・・。」

淋しそうな眼差しで、歩み寄った距離を彼は再び離した。

「・・・でも、努力はしたいと、思う。・・・君が望むなら・・・出来るだけのことを、したいと思う・・・。やっぱり我慢できなくて・・・君にその手を・・・離してと頼まれても・・・頑張って・・・離すから・・・。」

そう呟いた彼は、今にも闇に溶けてしまいそうだった。
この闇は少し彼に似ている。
優しく私達を隠してくれたり、光の届かない場所にもそっと寄り添っている所とか。

だけれども闇に溶けてしまえば、彼がどこからか用意してくれた純白のドレスを着た私には追い付けない。
闇は優しいけれど、同時に長い年月をかけて、彼の身の内を蝕んでいる気がしたから。

闇が優しいことを教えてくれたのは、それと同じ優しさを持つ彼だった。
暗い夜に怯えていた私に、星空を指し示して星間に横たわる闇を見ながら、そっと囁いてくれたのだ。

“影はね・・・寂しがりの光の傍に・・・いつでも付いているんだ・・・。”
“じゃあ、影は優しいんですね。”
“そう・・・そう思えば、恐くない・・・影も淋しいのかも、しれないから。”

そこまで言ってクシュンとくしゃみをした彼に、笑顔で返事をしてホットコーヒーを差し出す頃には、もう恐くなんてなかった。

一一一一一一一一一一一一

「じゃあ、お願いします。」

言って私は彼の手を取る。
彼の心の温かさは、もしかしたら町の人も気が付いているのかもしれないけれど、星を指し示すこの手が寂しがっている事は、知らないかもしれない。

命の単位の違う私と彼は、星と闇のようにずっと一緒には生きてはゆけないだろう。
けれどそれでもいいと、いつか来る喪失の痛みも含めて、受け入れてくれてくれた彼だから。

「ずっとずっと・・・。死んでも一緒にいます。どこまでも一緒にいたいですから・・・お願いだから、離さないで・・・っ!幸せなのは、何も違わないじゃないですか・・・!」

もっとちゃんと彼に届くような、しっかりした声が出したかったのに、零れてしまった涙でどうしても声が震えてしまう。
ス、と彼の手が肩に置かれ、少しずつ距離が縮まっていく。

「うん・・・俺も、同じ・・・。ずっと・・・一緒にいたい、から・・・。もう、離さない。」

愛してるの言葉と共に落とされた口付けは、彼のものか私のものかわからない、涙の味がした。

唇を離して少し照れながら、もう一度温もりを確かめるように抱き合った。













光は影の 影は光の
果てまで付いて行くのだろう










寂しがりの光に、寄り添う影のように。
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