Celeste Blue(二次)

□鐘を鳴らして
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【Side-dark】

誓いの言葉に頷いた彼女は、白いドレスが似合っていた。
とても太陽の下、牛を追ったり耕作している牧場主とは、誰も思わないだろう。
けれどそれも彼女の姿だ。

太陽の光が似合う彼女。
なのに彼女の生涯で最初の、そしておそらく最後になる結婚式は、ささやかな月光だけにライトアップされただけの、影の中でのものだった。

それは自分が彼女を引き寄せた結果を、よく表しているような気がした。
暗がりを恐がっていた彼女には、密かに申し訳ないと思っている。

普通の幸せは、望めない。
例えば結婚式を日の光の下で挙げられないように。
うまく言葉を紡げない自分を、もどかしく思いながらそう告げたとき、彼女はただ笑ってみせただけだった。

思えば、揺れていたのかもしれない。
戸籍が無いことを告げたときも、彼女はハッと何かに気が付いたように目を伏せたから。
やめる?と聞くと、強情、あるいは優しい彼女は首を振り続けたが。

一週間前に、ここで華やかな式があった。
彼女は呼ばれていたので参列したし、自分も遠くからそれを見ていた。
町の人は彼女が挙式しないことを感付いているらしく、時々気遣わしげにしていたが、彼女は笑って言ったのだった。

“幸せだから、十分なんです。”

胸を打たれた思いだった。
彼女はどこまでも自分を照らす光だった。

幸せにしたい。
出来得る全ての手段を使って。
人並みとはいかなくとも、せめて彼女がほんの少しでも幸せを感じて、自分と共にいてくれるように。
流されるままだった自分だが、初めて自ら動こうと思った。
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