Celeste Blue(二次)

□右手を繋ぐその前に
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【ラブストーリーが始まらない】

「大丈夫か?」
「痛い、ですけど。」

お・前・の・せ・い・だ・よ!
と前を行く先輩の背に無言のツッコミをする。
気は晴れないが、先輩が労る様な表情で振り向いてくれた。

「あいつら俺の事もああして集団で囲んでくる・・・全く何なんだろうな。」

うーわぁ。天然って時に凶器だ!
順平風に言えば、お手上げ侍!
先輩と私じゃどう考えてもニュアンスが違うんだよ。
体育館裏だなんて漫画な経験、この16年間したことないわっ!
あー、てか明日会った時のが怖い。

「お前も決闘申し込まれたんだろう。」
「はい!?」
「体育館裏だなんてあいつらもベタな事するよな。」
はぁあ!?
いやもう何このツッコミ所の多さは。
ゆかりならツッコミ過ぎて先輩に穴あけると思う。

「いや、あのそうじゃなく。」
「無理するなよ?タルタロスもあるんだから、決闘まで受ける事はない。」

あれ、会話が噛み合わない?
いや決闘って何(一方的にだったけど!ある意味正しいけどさ!)

「転校早々大変だと思うが、何かあったら相談に乗るからな。」

ふっと落とす様に微笑まれて、不覚にもドキリとする。
そうだこの先輩かっこよかったりするんだよ、顔も声も。

「ああ、そうだ。今日は英気を養うって意味で俺が御馳走してやる。」

じゃあなと言われて慌てて礼をする。
そのしっかりした後ろ姿を目で追いながら、意外と優しい、そして噂通り格好いい先輩なのかな、と思った。

「これは・・・。」
「うみうしの牛丼だ!旨いぞ!沢山食え!」
「このオレンジの粒々は。」
「プロテインに決まってるだろう。ああ、心配しなくても筋肉増強には効果があるぞ?こっちのドリンクにはな・・・。」

寮に帰り、密かに期待していた先輩との夕飯だ。
まぁ、百歩譲って牛丼はいいんだ牛丼は。
私だって丼物は好きだし、牛丼に罪はない。
罪なのは、当然の様にプロテインを添加する真田先輩の思考回路だ。
というか何の心配をしてると思われてるのだろう。
聞くのが怖い。

「ほら、遠慮しないで食え。」
「・・・はぁ。」

勧められるままに夕食をとるしかなかった。
牛丼はボリボリするし、微妙に飽和状態のプロテインドリンクはネトネトした。
ちょっと離れた所で、ゆかりが憐れむ目で見てくる。
ボリボリ牛丼をかみ砕きながら、その後ろでお手上げ侍してる順平を、取り敢えず視線で殺せればいいと思った。

「今日は張り切ってタルタロス行きますから!みんなよろしく!」
「頑張るな!俺も早く治さないとな。」

あーこの先輩何から何までわかってない!
というか昼間のちょっとしたときめきを、心の底から返して下さい。
私は自分のときめきを後悔した。

とにかく今私がすべきは、明らかにカロリーとタンパク質多過な夕食を消化することだ。
その日の私はタルタロスデビュー二日目にしては、やけにハイパワーに何とかのマーヤを八つ当たり的に刈りまくった。
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