Celeste Blue(二次)
□この花は届かずに
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『届かない花』
女運は 悪かった。
分かってはいたんだ。
入れ墨を見た瞬間、頭は。
だけど心は叫んでいたんだ。
“会いたかったわ”
オレは会いたくなかったね。
少なくともこんな形では。
“だましててごめんなさいね”
いっそ騙されたままでいたほうが、どれほど幸せだった事か。
“ありがとう”
ブランドものを喜ぶ他の女と違って、彼女は花を喜んでくれる優しい人だった。
深紅の薔薇が似合うそれはもう美しい人で、街を歩けばその存在感で人々が魅せられ、少しだけ誇らしかった。
だけど、彼女は
“返事をしろっ!”
オレの軍人生命をあっけなく奪い、そして喪失した。
大佐曰く、砂のように霧散したらしい。
大輪の薔薇はオレを騙し、そして散った。
オレは差し詰め愚かな虫けら。
“人間よ”
だけれども、オレは確かに見たんだ。
化け物と罵られ、その目が哀しみに歪む姿を。
あぁ、どうか。
その一瞬、オレと過ごした日々のひとかけらでも彼女が思い出してくれていたなら。
哀しいけれど、虫けらは救われる。