Celeste Blue(二次)

□その間130センチ
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「こっちだ!走れっ」

チャラチャラと頭の中をかき乱す音に、すくむ足。
再び動きだしたのは、繋いだ手の熱さと強さ、そして大きさのせいだった。

たびたび自分を導くためにつながれる手は、荒垣やリーダーの彼のもので、他の人は皆無。
寧ろ自分が引く立場の方が、圧倒的に多い。

この手を引くのは、太くてごつごつした手か、白くて細い指かのどちらかだった。
だからだろうか。
大きな手に引かれたとき、一瞬だけ息が詰まってしまった。
それは太くも細くもない、だけれども広い、微かに湿った男の手だった。
この手を引いたことはある。
だが、引かれた事は無かった。

だから思わず、追われることから解放されたとき、彼の名を呼んでしまったのだ。
「明彦」と。

彼は振り向いた。
少し心配そうな表情。
名を呼ばれたからではなくて、震えた自分の声に思うところがあったのかもしれない。

「どこか傷めたのか?美鶴。」

彼が呼ぶ自分の名が、存外優しく響いたので、今感じたことを、どう言うべきかわからなくなってしまった。
驚きと言うべきか、痛みというべきか。
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