Celeste Blue(二次)

□この花は届かずに
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住んでいた軍の寮を引き払うために、家族の手を借りて帰ってきた。

ほこりが薄く積もり、次にソラリスと会ったときに渡そうとしていた薔薇は、天然ドライフラワーになっていて、彼女が消えても、世界は容赦無く廻る事を知る。

花瓶からその褪せた薔薇を取出して、窓を開く。
窓際に立つと、愚か者を嘲笑うかのように冷たい風が吹いた。

秋晴れのヘイズブルー。

いつかの幸せな日々に、花を喜んだ彼女があの色を綺麗といった。
今はただひたすらに愚者の心を突き刺している。

くしゃりと花を握り締め、花びらをそっと風に流す。
深紅は小さく幾重に重なり舞い上がり、そのまま無限の青に吸い込まれた。

貴女が砂の様に散ったのなら、いつかこの花は、貴女に届くのだろうか。

そっと一度だけ、心の中で錆付いた名前を口にしたら、きしりと胸が軋んだ。

傷つけられてなお貴女を恋い慕う、愚か者の花が、いつか誰かに出会う様にと。
そんな祈りに似た願いをかけて、最後の深紅のひとかけらを見送った。

Fin
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