Celeste Blue(二次)

□承服不可
2ページ/6ページ

気が付くとそこは見知らぬ白い部屋だった。
だが見覚えのある病院着と、鼻を突く独特の消毒薬の匂い。
そして左の胸の下の痛みに、朧に何があったかを思い出した。

「なんて無茶をしたんだ。」

意識にストンと落ちるそのテナーに、半ば無意識にも似た自然さで振り向いた。
そこには少しやつれたように疲れ切った表情の彼がいた。
その怒りとも悲しみとも知らない声色に、私は痛みを堪えて横たえていた身を起こした。

「何故こんなことを。」

彼の咎めるような響きに思わず身を竦ませるが、せめてもの意地で、その漆黒の瞳だけは見据え続けた。

「・・・不注意により危険に晒してしまった事は・・・申し訳ございませんでした・・・」

途切れがちに響く自分の声がひどくか細く、これでは彼に信頼してもらうには情けなさすぎるだろうと、私は内心冷静に自嘲していた。

「そうじゃない。」

きっぱり言われたので、思わず顔をしかめる。
他に何か過失があったのだろうか?

「・・・そうじゃ、ないんだ・・・」

そう言った彼は、酷く憔悴しきっていて、こちらが悲しくなるぐらい暗い目で自分を見つめていた

「どうして・・・盾になったんだ」

彼が吐いた言葉に、私は自分の顔が歪むのを自覚した。

「私の過失は私が負うものであり、何よりも、私が貴方の盾であり武具であるからです。」

今度はきちんと発話出来たと思う。
声も瞳も揺れず歪まず、軍人らしく、彼の盾らしく。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ