Celeste Blue(二次)

□その間130センチ
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黙って首を振る。
なんでもないんだ、と呟いた声はやはり常の自分より弱々しく空をさ迷った。
明彦は少しだけ黙っていたが、再び手を引いて歩き始めた。

これではシャドウが来た時危ない。
そう思い、上手く機能しない喉を奮い立たせそう言おうと思ったが、彼の言葉の方が早かった。

「いつもこの手は、シンジがひいてたんだ。俺とお前とシンジ。3人ならどこまでも行ける。そう思ってた。」

私もだ。
だがそれは言葉に出来ず、放せというはずだった手は、もっときつく握られた。
明彦の右手と、自分の左手を引いた彼は、もう。

いつからだろう。
彼の背を追う自分の小ささに気が付いて、背伸びをしようとしていたのは。
それはもう、思い出せないぐらい遠い過去だったけど。

「でも、どこにも行けなかった。だってシンジには引っ張ってくれる人はいなかったから。シンジはもう両手が塞がってたから。」

クシャリと視界が滲む。
塞いだのはそう、幼き自分達。
負荷であり重荷であり。
明彦は繋いだ手をフワリと目の高さに持ち上げた。

「シンジがいなくなってから、お前が引いててくれたんだな。こんな細い手で。」

ありがとう、そしてごめんな、と、今にも泣きだしそうな笑みで、明彦はそう言った。
それは眩暈がするほど大人びていて、彼がいない証でもあった。

「これからは俺も引くから。だけどだめそうだったら。」
「あぁ、私も引いていこう。共に。」

やっと自分の口が機能する。
自分の手を引いた明彦の手は大きくて熱かった。
それを心地よく思う反面、微かに痛みを覚える。
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